空旅のユニバーサルデザインに関する研究開発
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車椅子利用者のアクセシビリティを向上させる脱着可能な航空機座席の提案
JAXAとトヨタ紡織株式会社は、身体障害者およびその介助者にとって課題となっていた、狭い機内での座席への移乗に伴う身体的負担を解消する航空機座席のコンセプト「ウェルボヤージュ・シート」を提案します。
「ウェルボヤージュ・シート」は、航空機の座席フレームから個別座席を取り外し、乗客を乗せたまま座席ごと移動させることが可能となるコンセプトです。方向転換することなく横方向に移動可能であるため、狭い機内においても操作が容易であり、機内通路も通行可能です。これにより、狭い機内で座席に移乗する必要がなくなり、移乗介助が必要な乗客とその介助者は身体的負担なく航空機を利用できるようになります。加えて、移乗介助が必要な乗客にとってこれまで困難であった窓側席の利用も可能となります。

座席部を取り付けた状態のウェルボヤージュ・シート。通常の座席と同等の快適性が確保されています。(画像提供: トヨタ紡織株式会社)

座席部を取り外した状態のウェルボヤージュ・シート。取り外した座席は車輪を有しており、移動可能です。(画像提供: トヨタ紡織株式会社)

搭乗降機やトイレ利用の際、乗客は座ったまま移動することができます。狭い機内での移乗介助支援はもはや不要となります。(画像提供: トヨタ紡織株式会社)

窓側席へのアクセスが容易になり、移乗介助が必要な乗客が窓の外の景色を楽しむことができるようになります。(画像提供: トヨタ紡織株式会社)

座面のクッションは取り外し可能で、代わりに自分の使い慣れたクッションを設置することができます。自分のクッションが厚いものであっても、違和感なく座ることが可能です。(画像提供: トヨタ紡織株式会社)
取り組みの背景
一般的に車椅子を利用する身体障害者が搭乗する場合、機内通路を通行できる小型の車椅子で機内に入り、座席に移乗します。しかし、機内は狭く座席の背もたれが高いことから、移乗介助のための十分なスペースがありません。そのため移乗介助が必要な乗客とその介助者にとって、座席への移乗は普段と異なる姿勢を強いられ、大きな身体的負担がかかります。これは搭乗降機時だけでなく、飛行中のトイレ利用時も同様です。また十分な介助スペースがないことから、移乗介助が必要な乗客を窓側席まで移乗させるのも困難でした。
本提案によって、乗客が座ったまま座席と一緒に移動できるようになります。これにより、座席への移乗は搭乗ゲート前などの広いスペースで行うことが可能となり、機内の狭いスペースでの移乗はもはや不要となります。これにより、普段と同じ方法で移乗介助可能となるため、介助者、被介助者の身体的負担を軽減することができます。加えて、窓側席までも容易にアクセスできるようになるため、移乗介助が必要な乗客であっても、気兼ねなく窓側席でのフライトを楽しめるようになります。