空旅のユニバーサルデザインに関する研究開発

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2026年6月15日

視覚障害者に向けた、機内食用テーブルウェアコンセプトの提案

JAXAと大阪工業大学は、視覚障害者にとって使いやすいテーブルウェアのコンセプト「TactDine for All」(タクトダイン・フォー・オール)を提案します。

提案するコンセプトは国際線で提供される機内食を想定し、アントレ(メインディッシュ)、小鉢、カトラリー、マット、食事用エプロン、情報タグで構成されます。

JAXAと大阪工業大学は、視覚障害者へのヒアリングや階層分析法(AHP法)を用いた機内食配置の定量的な評価に基づいて、当事者が認識しやすく使いやすい形態のテーブルウェアに仕上げました。これにより、航空機の狭小な空間においても視覚障害者が自律的かつ快適に機内食を楽しめるようになります。


提案するテーブルウェアコンセプトは、フルサイズ(350mm×250mm程度)の機内食を想定しています。テーブルウェアの配置は飲料を奥にして転倒に配慮すると共に、クロックポジションで小鉢やアントレの位置を把握しやすいようにしました。(画像提供: 大阪工業大学)

既存のアントレ容器に装着する樹脂製のホルダー。ホルダーを装着することで容器が持ちやすくなるだけでなく、元の容器を一部露出させる構造にすることで、内容物の温度や手応えを指先で感知できるようにしました。ホルダーは機内食提供時に装着することができ、繰り返しの利用が可能です。(画像提供: 大阪工業大学)

ダンベル形状の小鉢。波模様の側面は手に取ったときに滑りにくくなっています。中央にくびれを設けると共に底面を糸底にすることで、指がかりをよくして持ちやすくしました。蓋の表面にはそれぞれ固有のレリーフを入れることで、各小鉢の識別をしやすくしています。食べ物の色と器の色でコントラストを付けられるよう、内面色は濃淡2パターン用意しました。本小鉢は洗浄して繰り返し使用することを前提としています。(画像提供: 大阪工業大学)

既存のカトラリーの持ち手に装着する半円形状のエンドキャップ。エンドキャップの形状の違いによって、スプーン・フォーク・ナイフを識別することができます。また半円の面か平らな面かでカトラリーの表と裏を区別することもできます。エンドキャップによってトレーと持ち手に隙間ができるので、そこに指を入れて手に取りやすくなっています。エンドキャップ部分を持つことで軽い力でカトラリーを保持でき、床に落とすリスクを軽減できます。エンドキャップは誤飲を防ぐサイズに設計されており、材料は環境にやさしい再生プラスチックです。使い捨ての運用を想定しています。(画像提供: 大阪工業大学)

エリアごとに配色した、触知可能な仕切りの付いたマット。エリアごとにコントラストをつけることでレイアウトを把握しやすくなります。仕切りは折り畳み式で、これを立てることで触察によってエリアを判別しやすくなり、バターの存在に気づかないといった問題を解決すると共に、手に取ったものを元の位置に戻しやすくします。角に設けた仕切りは飲み物の転倒を防止します。マットには再生紙を用いることで環境にも配慮し、使い捨てによる運用を想定しています。(画像提供: 大阪工業大学)

衣服の保護に加え、表裏両面に大型のポケットを配置した食事用エプロン。ポケットには外した小鉢の蓋や、おしぼりなどを直感的に入れることができます。水滴や食べ物がついたものをポケットに入れられるよう、エプロンには防水・防汚処理が施されています。表裏両面にポケットがついているので、表裏を気にすることなく着用できます。狭い座席でも着用しやすいように、頭からかぶる穴を設けています。エプロンもマットと同様に再生紙の活用し、使い捨てを想定しています。(画像提供: 大阪工業大学)

数メートル離れた場所から自身のスマートフォンやタブレット端末のカメラを合わせることで情報を読み取ることができる二次元コードを印刷した情報タグ(二次元コードは黒塗り部分に印刷)。ネックストラップやリストバンドとして、機内または搭乗前に配布することを想定しています。これにより任意のタイミングでメニューや各種情報を音声等で取得できます。(画像提供: 大阪工業大学)

取り組みの背景

機内食には、アレルギー、宗教、ベジタリアン、健康食など多様な特別食がある一方、視覚障害を考慮したものはほとんど提供されていません。視覚障害者は食事をする際、食べ物の位置やカトラリーの場所を触察によって把握することから、食べ物の周囲にある程度のスペースがある方が望ましいとされています。一方で機内食においては食べ物やカトラリー、飲料等がトレー内に隙間なく敷き詰められ、テーブルも機内食のトレーを置くと十分なスペースがありません。また、隣席との距離が近いため手を十分に動かすことも難しく、機内食の喫食には困難を伴います。さらに当事者ヒアリングから、これらの課題に加えて食べ物をこぼして周囲を汚してしまうのではないかという不安があること、食事のメニューや配置を事前に把握するのが難しいことが分かっています。

そこで本コンセプトは、機内食として提供するための運用上の制約を考慮しつつ、当事者ヒアリングで得られた意見をもとに視覚障害者の触察性と自律性を高めたテーブルウェアとしてデザインしました。快適に機内食を楽しめることは乗客体験の向上に繋がります。これにより、より気軽に航空機を利用できるようになり、視覚障害者の航空機利用の拡大とインクルーシブな社会の実現に貢献します。

2026年8月3日更新