宇宙航空研究開発機構

昨年10月に大樹町で行なったLIFLEX予備試験を、覚えていらっしゃるでしょうか。実験隊員がヘリコプタのダウンウォッシュを浴びながら踏ん張っていた、あの実験です。

昨年はまだ予備段階でしたが、今年は本番です。本番にむけて、今日から約2週間にわたり予備試験を行ないます。
去年の予備実験と違い、今回は、いよいよ実験機本体が登場します。実物の実験機を実際に吊り上げて飛行試験を行います。

今日は実験隊メンバーと機材が大樹町入りし、明日からの実験に備えて準備を行ないました。

航空機の騒音を減らすには、「静かな航空機を作る」技術と「航空機を静かに飛ばす」技術が必要です。今回のMuPAL-εは、ヘリコプタの地上騒音を最小にするような飛行経路をパイロットに指示して飛行する実験です。

今回のMuPAL-εは、実験用に搭載されている露点温度センサの精度を検証する試験です。露点温度とは、空気中の水分が凝結し始める温度のことで、大気温度と露点温度を測ることによって湿度を求めることができます。

MuPAL-εの胴体の下に取り付けられた露点温度センサ。

この露点温度センサは、大気観測を行う飛行機用に開発されたものですが、ヘリコプタに搭載するのは世界で初めてになります。ヘリコプタに搭載することによって、ヒートアイランド観測試験(2006年8月7日実験用航空機レポート参照)のように、飛行機では飛べないような場所の大気データを計測することが可能になりました。

IFRとは?

航空機の飛行方式は、有視界飛行方式(VFR)と計器飛行方式(IFR)に大別されます。VFRでは、パイロットが地形や他の航空機を目で見て確認し、衝突しないよう飛行します。視程(見通しのきく距離のこと)が良い時に限られますが、好きな場所を飛行できるという利点があります(実際には飛ぶことが禁止されている場所もあります)。一方、IFRでは、定められたルートに沿って、地上の管制官の指示に従って飛行します。管制官は、レーダ等で航空機の位置を確認し、航空機同士が衝突しないようにパイロットに指示を出します。IFRでは視程の制限を受けないため、雲の中を飛ぶことも許されています。(IFRについては2006年7月27日実験用航空機レポート参照)

ヘリコプタの上で回っているロータの羽根のことをブレードと呼びます。MH2000の場合、長さ6.1mのブレードが4枚付いています。このブレードは、付け根付近が関節(ヒンジ)のような構造になっており、上方向に曲がるようになっています。この曲がった角度のことをフラッピング角と呼びます。フラッピング角は飛行中にパイロットの操縦によって変化し、それによって機体に加わる力の向きが変わるので、ヘリコプタは自由に動き回ったり風に逆らって空中で静止(ホバリング)したりすることができます。MuPAL-εは、ヒンジの中に特殊なセンサが入っており、飛行中のフラッピング角を計測できるようになっています。

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