静粛超音速機統合設計技術の研究開発

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2022年7月6日

超音速機技術の研究開発に関するNASA、ボーイング社との共同研究におけるJAXAでの風洞試験の実施について

JAXA航空技術部門は、米国航空宇宙局(NASA)及び米国ボーイング社とともに、NASAの実験機X-59の超音速風洞試験を、JAXA調布航空宇宙センターにある1m×1m超音速風洞にて実施しました。

X-59は、NASAが開発を進めている飛行実験機で、ソニックブームと呼ばれる超音速飛行時に発生する衝撃波に起因する騒音を低減するように設計されており、将来的なソニックブームの国際基準策定に貢献するための飛行試験を行う目的で開発されています。

今回の試験は2020年12月に締結したNASA、およびボーイング社との共同研究協定に基づき、X-59の低ソニックブーム設計を検証することを目的として、NASAが製作したX-59の1.62%スケールの風洞試験模型を用いて実施しました。JAXA超音速風洞でX-59の飛行マッハ数であるマッハ1.4の気流を発生させ、その中におかれたX-59模型から発生する圧力波を、JAXA所有の圧力計測レールを用いて計測しました。今回使用したJAXAの1m×1m超音速風洞は民生用としては国内最大の超音速風洞で、これまでにも国内外のパートナーと多くの試験を実施してきた実績があります。また使用した圧力計測レールは、JAXA独自形状で、これまでにJAXAで研究を重ねてきた成果が活用されています。

COVID-19の渡航制限により、NASAとボーイング社の試験チームはJAXAでのテストに直接参加することができませんでしたが、NASAとボーイングのチームメンバーがシアトルのボーイング社に集まり、「バーチャル・コントロール・ルーム」と呼ばれる試験会場を設置して、オンラインでJAXAの風洞と接続することによりJAXAの試験チームを支援しました。

予定した試験ケースを全て実施し、速報値ではデータの品質が良好であることも確認されています。計測された圧力波形はNASAおよびボーイング社に提供され、NASAの風洞で取得されたデータとともに、今年末にソニックブーム推算ワークショップで活用される予定です。超音速機の研究を進める3者が、共同で試験の企画から実施しまでを進めたこの試験は、それぞれに有益な機会となりました。

JAXAはNASA、ボーイング社との国際協力を通じて、引き続き低ブーム超音速機の実現や環境基準策定に貢献してゆきます。

JAXAの1m×1m超音速風洞に設置されたNASA X-59風洞試験模型とJAXA計測装置