磁力支持による航空宇宙機形状の後流構造の解明

磁力支持風洞は、風洞模型を磁気力により支持しているため、通常の風洞試験設備のような支持装置の干渉の問題が発生しません。これによりさまざまな形状の模型の抵抗係数や後流の計測が理想的な状態で行えます。このような磁力支持技術は、JAXAが世界をリードする技術で、JAXAの磁力支持風洞は実用的風洞試験が実施できる世界唯一の磁力支持風洞と言えます。
支持装置が必要ないため、軸対称物体を試験することができることも、これまでの風洞とは大きく違います。球や円柱のような軸対称物体の後流は流体力学の基礎的な現象としても重要ですが、このような軸対称物体は詳細な研究はされてきませんでした。

本研究では、磁力支持技術の最大の強みである、支持干渉が無いという特徴を最大限に生かし、高亜音速における鈍頭形状物体の後流中の渦構造について明らかにします。例えば後部に丸みを有している惑星大気再突入カプセルは高亜音速から遷音速域において動的に不安定になり運動が発散する傾向にあり、従来の風洞試験では計測結果が支持装置の干渉を受けることがわかっていますが、磁力支持技術によりその現象のメカニズムを解明します。
さらに、支持装置の干渉が顕著となる動的試験において、磁力支持技術を用いて、模型の加振の応答から動的空力特性を求める風洞試験手法を全機形状に適用することで、実用性と信頼性を評価します。

CFDによる3次元ブラフボディの後流渦構造の分析結果


2018年10月29日更新