デジタル/アナログ・ハイブリッド風洞(DAHWIN)

風洞による流体実験(EFD: Experimental Fluid Dynamics)は、実際に空気を流して計測するため、信頼性は高いデータを取得できますが、実験の準備にコストがかかったり、計測できるデータが限定される等の課題がありました。一方、昨今はスーパーコンピューターを利用した流体数値シミュレーション(CFD: Computational Fluid Dynamics)が行われており、こちらは比較的低コストで大量の情報が得られますが、信頼性が必ずしも保証されていないという弱みがあります。
EFDとCFDを融合させお互いの短所を補うことにより、空力性能の予測精度の向上や航空機開発の効率化を図るために開発したのが「デジタル/アナログ・ハイブリッド風洞」=DAHWIN(Digital/Analog-Hybrid Wind Tunnel, ダーウィン)」です。

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デジタル/アナログ・ハイブリッド風洞(DAHWIN)のコンセプト

DAHWINにより、例えば以下のことがこれまでより高精度・高効率に分析できるようになります。

  1. (1) CFDによる風洞データの改良
    1. ⇒ 風洞壁や支持装置の影響の無い風洞データが取得可能
    2. ⇒ CFDにより、風洞試験の弱みをカバー
  2. (2) 風洞データによるCFDの改良
    1. ⇒ 簡単に多くの風洞データによるCFDの精度検証が可能
    2. ⇒ 風洞データにより、CFDの信頼性を向上
  3. (3) インターネットによる風洞/CFDデータ確認
    1. ⇒ 遠隔地からでも風洞試験への参加が可能
    2. ⇒ 設計開発のリアルタイム性、利便性向上

DAHWINの使用例1(EFDとCFDの結果を同時に表示することで、即座に比較が可能)

DAHWINの使用例2(CFDを用いて、支持装置のある風洞試験の結果を、支持装置なしの結果に補正)

DAHWINは、2008(平成 20) 年度に設計をスタートし、JAXAで研究開発中の大気突入カプセルやD-SEND#2に試験的に適用した上で、2012(平成24) 年度末に全システムを完成させ、現在は2m×2m遷音速風洞及びJAXAスーパーコンピュータシステム(JSS)と組み合わせて使用されています。今後はJAXAのさまざまな研究開発に活用するのはもちろんのこと、次世代国産旅客機の開発など企業による航空機・宇宙機等の開発にも役立てていきます。

2018年10月15日更新