世界最速の高効率流体解析ツールの開発と社会貢献

JAXAが開発した高効率流体解析ツール(HexaGrid/FaSTAR)は、世界にも類を見ない自動化・高速化が支持され、さまざまな分野で幅広く活用されてきています。このツールはデジタル/アナログハイブリッド風洞(DAHWIN)にも組み込まれており、風洞試験の効率化に役立てられています。
本研究では、解析ツールの検証による信頼性向上、機能追加による利便性向上、GUI(Graphical User Interface)による操作性向上を行い、ユーザーフレンドリーな解析ツールの構築を目指します。このツールを多くの人に使ってもらい、活用を促進することで、さまざまな解析作業の現場で業務の効率化を可能にします。また、社会貢献の一例として、教育を目的とした利用に関する覚書を締結して、10以上の大学・高専に開発した解析ツールの実行モジュールやパッケージ化したソフトを提供しています。

高速非構造流体解析ソフト「FaSTAR」

FaSTARは、JAXAが開発した世界トップレベルの高速性を持つ流体解析ツールです。非構造格子(任意形状のメッシュ)に対応した圧縮性流体解析ソルバーで、特に航空機や宇宙機などの空力解析に適しており、効率的なデータ構造と計算アルゴリズムで世界最高レベルの高速化に成功しました。今後、収束加速法の改良により、さらに高速なツールを目指して開発を進めています。

FaSTARで計算した機体表面の圧力分布

六面体自動格子生成ツール「HexaGrid」

CFDにより流体の現象を解析するためには、空間を格子状に分割するところから始めます。HexaGridは、六面体ベースの非構造格子を自動生成するツールで、手動で1~2カ月かかっていた下図のような旅客機形態の格子を1~2時間で生成することができます。また、その格子を用いた空力予測の精度についても、手動生成格子を用いた場合と同等の結果が得られることが実証されています。

HexaGridで生成した計算格子

共通基盤空力解析ツール「FaSTAR-Move

これまでJAXAで開発してきた世界最速の流体解析ソフト「FaSTAR」 を拡張し、搭載物分離解析、構造連載解析を可能にする「移動・変形物体解析モジュール」と、航空エンジンのファン・圧縮機・タービンなど翼列の解析熱連成解析を可能にする「エンジン解析モジュール」を組み合わせた新しい空力解析ツール「FaSTAR-Move」を開発します。これにより複雑形状でも高速にCFDを可能にします。
さらに将来的には、定常・非定常に係わらずあらゆる状態の空力予測が可能なCFDツールを開発し、次世代航空機開発への活用を支援します。

空力解析ツール「FaSTAR-Move

Windows版2次元流体解析パッケージソフト「CL Pack」

CL Packは、CFD入門者を対象に、大学講義などで利用しやすいように、2次元解析用格子データとFaSTAR実行ファイル群をGUI付Windows版としてパッケージ化したソフトウェアです。

解析対象などを選択、設定保存

気流条件、計算スキームなどを設定

NACA0012環、Re=1×106、迎角3度のマッハ数分布
(Paraviewによる可視化例)

社会貢献の実績

JAVAが開発した高効率流体解析ツール「FaSTAR」は、東京大学で航空機設計に、名古屋大学で流体力学の講義に使われるなど、企業や談大、教育機関で利用されています。

利用事例

  • 三菱重工業株式会社
  • 北海道大学/室蘭工業大学/東北大学/東京大学/東京農工大学/早稲田大学/電気通信大学/日本大学/首都大学東京/横浜国立大学/東海大学/山梨大学/長岡技術科学大学/名古屋大学/中部大学/富山大学/金沢工業大学/京都工芸繊維大学/龍谷大学/鳥取大学/高知工科大学/九州大学
  • 旭川高専/岐阜高専/鈴鹿高専/高知高専