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宇宙航空研究開発機構

和田 大地

2015年4月入社
次世代航空イノベーションハブ 航空環境技術研究チーム

――航空技術部門を目指したきっかけを教えてください。
 私が所属していたシステム創成学専攻では、さまざまな分野を横断して幅広く研究を行う学科で、私は構造モニタリングのための光ファイバーセンシングについての研究を行っていました。航空機や宇宙分野に限らず、船や橋、複合材料などいろいろな分野の構造物・材料を取り上げましたが、それらの研究の中で、航空技術部門の方々と光ファイバーセンサーを使った構造物のモニタリング研究を行う機会がありました。その時「JAXAに興味はないか」と声をかけていただいたこともあり、自分の研究を活かしてチャレンジしたいと思いました。

――現在携わっている研究内容は、どのようなものでしょうか。
 最近「HOTALW(ホタル)」という飛行実証試験を行いました。これは、実機による光ファイバーセンサーを使った構造モニタリングの研究で、JAXAの実験用航空機「飛翔」で行いました。航空機の胴体の背骨にあたる胴体ストリンガー(縦通材)に髪の毛くらいの細い光ファイバーを貼り付け、私たちが開発した測定システムで光ファイバーの歪みを計測することにより、航空機が旋回している時にストリンガーがどのように変形しているか、どれくらい構造に負荷がかかっているかなどをモニタリングする研究です。
 光ファイバーを、構造物の「神経」のようにすることで、これまでは見つけられなかったような細かい損傷などを飛行中に感知できるようになれば、安全性や信頼性の向上につながります。

――仕事のやりがいや、航空技術部門の魅力とは?
 世の中に研究の成果を発信できる、自分の研究が形になって残るという面白さがあります。大学では、航空機の安全性を向上させるという視点で要素研究をしていましたが、JAXAではその技術を実現・実装するためにはどのように形にしていくのかという研究開発が求められます。メーカーなどの方々と一緒に仕事をする機会が増えるので、産業界がどのような技術を必要としているのかなども意識しています。与えられたテーマを研究しているだけではダメで、自ら研究テーマを探して課題設定するなど、新しい発想を出していくことも要求されます。さらには、自分の研究が世の中にどう役立つか、産業界に対して経済的に効果があるか、あるいは学術的な貢献があるかなど、多角的にストーリーを考える。そのように自分の研究の価値を意識していくことは、やりがいの一つになっていますね。
 JAXAに入社して最初の約半年間の研修で、筑波宇宙センターで「こうのとり」関連の開発に携わりました。その時は、プロジェクトの中で自分の役割があり、スケジュール的な前後関係やメンバー間のやり取りに応じて仕事を整理し、こなしていくというやり方でした。
 航空技術部門は、上から「こういうことをやりなさい」というような注文が少なく、ある程度の裁量が自分にある、主体性が発揮しやすい環境です。一方で、どのような研究をするかという課題設定を自ら行い、そのための知識や技能を自分で勉強していかなくてはなりません。やりがいとそれに伴う責任という点が、航空技術部門の大きな魅力だと思います。

――今後やりたいことや夢を教えてください。
 航空分野に限らず、宇宙やそれ以外の分野にも広く興味があります。私は読書が好きで、生物・動物の本から着想を得たりすることもありました。何か面白いことや役に立ちそうなことがあれば、いろいろ自分の研究に取り込んでいこうという姿勢で研究しています。そして、自分のコア技術である光ファイバーセンサーを使った構造モニタリングによって、20年後、30年後に「現在では想像できない未来の航空機」をいかに実現していくかを模索しています。そのためにJAXAにいる制御の専門家やロボットの専門家、また大学やメーカー、海外の研究者などにも話をして、「新しい構造物にはどのような可能性がありますか?」といったアイデアを日々集めるようにしています。まだ存在していないものを考えることは難しいですが、この技術をどのような新しいことに使えるかと考えながら研究をしていくのが研究者としての醍醐味の一つです。
 また、今あるニーズに合わせてものを作っていくだけではなく、これからどのような「今はないニーズ」が生まれ、それに対して自分がどのようなソリューションを持っているかを考えていく作業が大切だと思います。航空機用に開発された技術が、航空ではないもの、例えば風力発電など全く違ったものに分野を超えて活かされるのもいいと思います。私が所属する次世代航空イノベーションハブは、異分野・他機関とのつながりや行き来のしやすさがあり、風通しの良さを感じます。分野を超えた発想に対して寛容な部署だと思いますので、光ファイバーの研究だけという枠に閉じこもらず、自分が得てきた知見をいろいろな分野で活かしながら、自分の価値を出していきたいです。


2017年3月現在
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