COLUMNコラム

2021.10.6

宇宙用部品を少量生産(ミニマルファブ)

期間短縮課題

ロケットや人工衛星などの宇宙機はエレクトロニクスの塊であり、1機当たり数万―十数万点の電子部品で構成されている。

しかし、広く社会に普及している情報携帯端末などとは異なり、宇宙機はほぼ1点ものであり、そこに使われる電子部品、特に半導体部品には宇宙放射線や熱、振動、衝撃に耐える特殊な技術要求があることから、少量多品種製造という宇宙用途の特性にあった新しい生産方式が必要とされる。

また、半導体チップに搭載する特殊な回路の研究開発においても、現状の半導体試作サービスを利用する方法では1回のプロトタイプ製造だけで数カ月単位の期間を要するため、宇宙用途の半導体部品の研究開発を迅速に行う上ではこの期間短縮が課題となっている。

ICチップ試作

このような課題意識のもと、2017年より産業技術総合研究所と共同でミニマルファブ(少量生産システム)を活用した半導体部品の試作実証研究を開始した。数マイクロメートルサイズ(マイクロは100万分の1)のトランジスタ単体の試作を皮切りに、半導体チップ上に搭載する回路規模を徐々に増やし、19年には1000トランジスタ規模の集積回路(4ビットシフトレジスタおよびI/O回路)を設計、ICチップを試作し、動作実証に成功した。

このチップ製造で要した時間は約1週間であり、従来の数カ月を要するプロトタイプ製造に比べ大幅な期間短縮を図ることができたことも大きな特徴といえる。

今後、ミニマルファブを活用した生産方式を社会実装していくためには、少量多品種製造方式に適した品質保証手法を新たに構築していくことが必要になる。従来の製造ロットという概念がなく、多数のサンプルを使った統計的手法が適用できなくなるため、まったく新しい概念と手法が必要とされる。

また、ICだけでなくセンサーや微小機械構造を組み合わせたオリジナルIC製造への応用可能性を技術実証していくことも今後必要になるであろう。

IoTなど波及

現在、宇宙機を開発する企業とミニマルファブの事業立ち上げを検討する企業両方の協力を得ながら、研究開発を推進しているところである。

この新しい生産方式が確立できれば、航空宇宙分野だけでなく、IoT(モノのインターネット)など少量多品種製造を必要とする分野へ広く波及していく可能性がある。少量多品種生産が起こす技術革新にぜひご期待いただきたい。

ミニマルファブで試作したIC

© JAXA

※本コラムは2021年7月時点の情報となります。

1996年JAXAの前身の一つである宇宙開発事業団(NASDA)入社。入社以来一貫して宇宙用高信頼性半導体デバイスの研究開発に従事。耐放射線マイクロプロセッサーやASIC、メモリー素子などの宇宙用LSI開発を手がける。

研究開発部門 第一研究ユニット
研究領域主幹
新藤 浩之

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