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宇宙航空研究開発機構

坂井 玲太郎

2014年4月入社
FQUROHプロジェクトチーム

――航空技術部門を目指したきっかけは何ですか?
 子供の頃から飛行機が好きで、大学では航空宇宙工学を専攻し、中でも流体シミュレーションの手法をずっと研究していました。流体シミュレーションを選んだきっかけは、大学の人力飛行機チームに参加したことです。私はプロペラの製作担当で、プロペラを設計する際に簡単なシミュレーションを行ったことが、シミュレーションの面白さに触れた最初でした。
 JAXAに就職した理由は、大学と違って「ものづくり」の現場に近いこと、企業と違って設備が充実していること、例えば大規模な計算が可能なスーパーコンピューターや、シミュレーション結果と比較できる風洞などが揃っていることが決め手でした。実際にJAXAに入って、遠い将来のことを考えて研究している大学に対し、JAXAではもう少し近い将来、ものづくりに役立つ研究をしていかなければならないと感じました。例えば、シミュレーションの精度に関して、大学で研究したよりももっと細かく詰めなければならないといった点です。

――現在の研究内容を教えてください。
 配属先はFQUROHプロジェクトでした。すぐにプロジェクトに参加するという例は珍しいらしく、少し戸惑いもありましたが、航空機の騒音問題に取り組むところにとても魅力を感じました。空港周辺では、ジェットエンジンが発する騒音だけではなく、着陸時に航空機自体から発生する機体騒音についても、国際的に大きな問題となっています。翼や脚などの周りにある空気の乱れによって発する風切り音が、大きな騒音となって聞こえるという課題に対し、機体騒音低減技術が確立すれば、日本だけでなく世界中の空港周辺での騒音問題を少なくすることに貢献できます。
 能登空港で行われたJAXAの実験用航空機「飛翔」を使ったFQUROHプロジェクトの飛行実証試験で、私は地上管制を担当しました。飛行試験は1ヶ月間にわたって行われるのですが、その間はずっと試験を行う現地に滞在していました。飛行は天候に左右されますし、普段は屋内で研究することがほとんどで屋外での試験に慣れていないこともあって、結構大変でした。一度、飛行試験で「飛翔」に搭乗したことがあります。風の強い日で機体が揺れたので、個人的には怖い思いをしましたが、そのような飛行試験に参加することは学生の頃に思ってもいなかったですし、良い経験ができたと思っています。
 また、最初に参加した飛行試験ではGPS測位データの取得がうまくいかなかったのですが、その後、確実にデータ取得するための作業の流れの構築を任せてもらえ、次の試験ではキチンとデータを取得できました。始めにうまくいかなかったということがあっても、自分で考える機会を与えてくれる環境は、あきらめずに研究に力を入れることができるので、とてもありがたいことです。
 飛行試験期間以外は、試験結果の解析や、世界各国で行われている流体シミュレーションのベンチマーク結果や風洞試験の結果を、自分自身でシミュレーションした結果と比較するなどの研究を行っています。

――やりがいはありますか?
 FQUROHプロジェクトにより機体騒音解決のための技術が確立し、実用化につながれば、日本や世界の航空分野に貢献できます。これはとても大きなやりがいです。また、企業の方々と一緒になって大人数で進めるプロジェクトに参加するという経験も、学生時代にはなかった難しさや面白さを感じます。さまざまな方々の研究を知る機会が増え、大学では学べなかったいろいろな分野の知識に触れることができるのは、自分の研究の幅を広げることにもつながるので、うれしいですね。
 ベンチマーク問題を解くことにも難しい部分はあって、毎日論文を読むなどして新しい知識を得ていくことが必要です。そして、得た知識でいろいろと試していく中で、自分の中に知識なり技術なりが蓄積されていく、自分が鍛えられていく、ということもやりがいですね。また、FQUROHプロジェクトは騒音を低減させる技術の実証ですから、機体から出る音の解析にも携わっています。大学時代には流体だけをやっていたので、音の解析に関しては初めてのことですが、自分の研究の幅を広げると思いチャレンジしています。
 JAXAに入って研究するようになっても、飛行機が好きという気持ちに変化はありませんし、騒音を減らすという技術に直に触れている“手触り”があることや技術が実用化されれば空港周辺の環境改善につながるということが、研究を続けるための大きなモチベーションになっています。自分が関わるこのプロジェクトは、研究のその先にある実用化につながるという面で、ものづくりにもっとも近い場所なのだと感じています。いつか、機体騒音低減技術につながるデバイスを検討するために活かせるようになればと思っています。

――今後、やりたい研究や夢はありますか?
 いろいろなことを勉強しているところなので、将来の夢を語るのは難しいですね。強いて挙げれば、自分で機体を設計する、あるいは機体設計プロジェクトに関わることでしょうか。
 FQUROHプロジェクトの技術が確立すれば、既存の機体に低騒音化デバイスを取り付けることで、空港周辺の環境を改善できますが、さらに一歩進めて、最初から騒音低減のコンセプトを持った機体の設計ができればと考えています。また、FQUROHプロジェクトで関わりのある基礎基盤技術の数値解析と連携することで、プロジェクトで培った応用力を基礎基盤分野にもフィードバックできると思いますし、流体シミュレーションや空力音解析の分野で何か業績を残すことができればいいなと思います。


2017年3月現在
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