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宇宙航空研究開発機構

常識を破る?!

JAXAメールマガジン第191号(2013年2月1日発行)
吉田憲司

皆さん、こんにちは。私はD-SENDプロジェクトマネージャの吉田憲司と申します。
私は1996年に旧航空宇宙技術研究所(NAL)に入所し、小型超音速実験機プロジェクト(NEXST)、低ソニックブーム設計概念実証プロジェクト(D-SEND)を通して、次世代超音速旅客機(SST)の実現の鍵となる設計技術の研究開発に挑戦しています。
航空機の高速化は“空飛ぶ機械”のポテンシャルを最大限有効活用する方法の一つで、航空機の発達史そのものであると思います。その一つの到達点がコンコルドでしたが、経済性と環境適合性の観点で課題があり、2003年に運航中止となってしまいました。JAXAはその課題克服のため、公的研究機関として先を見据えた研究活動を行っており、確実に成果を挙げております。

さて、そのような次世代SSTの機体形状はどのようなものが理想的でしょうか? これまでの常識、つまり空気力学に基づきますと、コンコルドのような細長い胴体と薄い三角翼から成る機体となります。
それでは21世紀のSSTはこの延長線上にしか答えはないのでしょうか?最近の計算空気力学(CFD)と最適アルゴリズムを組み合わせた設計技術の発展は目覚ましく、未だ見ぬ驚くべき答えも出てくるかもしれません?!しかし、私は約60年前のR.T. Jonesの“斜め楕円翼”に着目したいと思います。これは左右非対称の翼(左が前進翼で右が後退翼、その逆も可)で、まさに航空機は左右対称という常識を破ったものです。

超音速での空気抵抗は同じ翼幅の三角翼の約半分、さらに翼面積を減らすことで摩擦抵抗も低減でき、離着陸時は傾き角(前/後退角)を小さくすることで横に長い翼として空力効率を高める、というものです。このような左右対称の制限を外すことで広がった設計自由度の中に、超音速での抵抗増加を低減できる余地が生まれることをJonesさんは理論的に見出しました(1952年)。それも線形理論の範囲内(但し複素数空間に拡張)で、です。
もちろん、実用化への課題は山積みで、なおも研究開発が必要ではありますが、革新的なコンセプト創出という観点におきましては、まさに研究者の原点であるべき「常識への挑戦」を超音速機設計に適用した最高傑作ではないかと感じています。

ツバメはB-787のような後退翼で高速に飛行することができますが、Jonesさんは「もし超音速で飛ぶ鳥がいたとしたらその翼はきっと左右非対称で斜めに傾いていただろう!」と話されたという逸話が残っています。“制限を緩め自由度を広げることで常識を超える!”このような例を参考に、21世紀の革新航空機への挑戦を続けて行きたいと思っています。

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