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宇宙航空研究開発機構

航空機開発に対する雑感……

JAXAメールマガジン第193号(2013年3月1日発行)
齊藤茂

みなさん、はじめまして。今回このコラムを担当することになりました航空プログラムグループの齊藤 茂といいます。私は大学を卒業後、ヘリコプターの研究一筋にやってきました。そのような経験の中から、いくつかのテーマを独断でピックアップして書いてみたいと思いますので、よろしくおねがいします。
これを読んでいる人の中で、ヘリコプターに実際乗ってみた人は何人いるでしょうか? 昔は、ほとんどいませんでしたが、最近では10人いれば1人か2人は必ず乗った経験があるといいます。これに対して、B777やA380といった最新のジェット旅客機には、乗っていない人の方が少ないと思います。これほど、ジェット機などの固定翼機とヘリコプターのような回転翼機とは、国民への親近感に違いがあります。

この違いは、どこから来るのでしょうか? 簡単にいって、(1)飛行速度の違い、(2)飛行形態の違い、(3)燃料効率の違い、(4)環境性能の違い 等が挙げられます。これらの課題についての議論は、後日に譲るとして、環境性能をひとつとってみましょう。この課題は、単に技術だけでなく、人間のもっている感性にも関係しているのです。
「ヘリコプターについてどう思いますか?」と聞くと、たいていの人は、「怖い、うるさい、(値段が)高い」といいます。要は、安全性、環境性能、利便性に対する課題(危惧)を人間の感性表現で置き換えたものですが、まさに技術だけではすべてが解決できない課題であることの証左ではないでしょうか。ここに、研究開発のテーマがあると思います。なぜなら人間が乗るすべての航空機は、安全で環境にやさしくかつ利便性の良い(と感じる)乗り物を目指しているからです。

みなさんの身近にある車と比べてみましょう。今では、低燃料消費(低燃費)、低騒音、低コストの車がエンジンの社会的イノベーションをへて出現しています。これは、身近になった車に対する利用者や社会からの様々な要求(課題)をメーカーが受け止め、それを独自の技術で克服してきた結果といるでしょう。技術に対する確固たる取り組みと、新しい技術を実用化しようとするまたできる環境が整っていて初めて可能となる、いわば「技術革新のサイクル」です。

航空機をより良くするための様々な課題の克服は、メーカー及び研究機関が一体となって、新たな技術革新とそれを実用化するための環境整備を常に意識しかつ保持できるかどうかにかかっています。よりよい航空機を製造するための「技術革新のサイクル」を考えたとき、「我が国の土壌にこのような環境が整っていることが必須である」ということは異論のないところでしょう。

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