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宇宙航空研究開発機構

実用性のある技術とは?

JAXAメールマガジン第194号(2013年3月15日発行)
飯島朋子

はじめまして。今回は環境適合機体技術チーム(本務:DREAMSプロジェクトチーム)の飯島朋子です。
常々、JAXAの中でも、どこの会社でも「実用性のある技術を目指しましょう!」とか、「実用性のある技術を研究しましょう!」といったフレーズを耳にしますが、どうしたら実用性があるものと言えるのかというと、それを明確にイメージすることはとても難しいことです。

現在、私はFEATHER(Flight-demonstration of Electric Aircraft Technology for Harmonized Ecological Revolution)という研究活動に関わっています。この研究活動では既存のモーターグライダーのレシプロエンジンを電動推進システムに換装して飛行実証するものです。今や電気自動車が珍しくない時代となりましたが、その電気自動車の飛行機版となる新しい独自の技術をJAXAは飛行実証しようとしています。
推進システムを電動化することでCO2削減はもちろんのこと、燃費の向上・整備性向上にも寄与できます。また電動化することで初めて実現可能な今までとは異なる操縦システム・航空機形状等も世界中でどんどん考案されており、未来型航空機の一つの形だと思います。解決しなければならない課題は山積みですが、電動化ならではの利点を生かして、将来、用途を限った航空機の使用方法(例:訓練やコミューター機)も提案できるかもしれません。数年後は自家用飛行機に燃料を給油するのではなく、家庭用電源をつないで充電しているシュールな自分の姿を想像してしまいます!! 実際、ドイツで「Arcus E」という電動モーターグライダーに体験搭乗した後に「体験搭乗の費用をお支払します。」と申し出たら、先方のパイロットは「ちょっとそこの家庭用電源で充電しただけだからお金かかってないんだよね~、お金はいらないよ~。」と笑顔でおっしゃられていたのを思い出します。

ところで、このFEATHERの研究活動がJAXA内で承認されるにあたっては、新たに開発する電動推進システムを機体に搭載して飛行させ機能を確認する「飛行実証」をするかについて疑問を持つ意見がありました。
確かに、コンピュータを使ったシミュレーションでも風洞試験でも電動推進システムの一部の性能データを確認することはできます。例えば電動モーターやバッテリー単体、電動航空機用の計器単体、プロペラ単体であれば地上試験のみでも良いのかもしれません(それも飛行実証でしょうという、そこの貴方!その通りだと思います)。しかし、各単体の設計・開発の検証は地上でできても、それらを搭載した統合システムとしての性能や耐空性上の課題抽出、パイロット-システム間の適合性を飛行実証なしにどのように証明するのでしょうか?
また海外のメーカーや研究者へ研究を紹介する時、彼らは「で、飛んだの?」と必ず聞いてきます。「いやいや飛んでないんです。」と言ったらニヤッとして、「よくできてるね。じゃ、また。」で終わりなのです。世界では実環境での飛行試験(機能・性能検証)を行わずして技術が完成したとは言えず、相手にされません。欧米の航空先進諸国は飛行実証の重要性を熟知しています。特に、電動航空機は飛び始めて間もないので耐空性基準を世界中で議論しているところです。一日も早く、我々の技術も飛行実証しその議論に仲間入りする所から始めないと世界に追いつくことができませんし、議論を始めた今だからこそ主流への仲間入りが期待できます。
実際、飛行試験してみると想定していなかった問題点が必ずでてきます。これらの全てを解決して初めて実用性のある技術になるのではないでしょうか?実際に飛んだとなれば世間の関心を集め、この技術を使用したい・搭載したいという引き手も出てくるでしょう。

「To invent an airplane is nothing, to build one is something, to fly is everything. Otto Lilienthal」
(「飛行機を考えるのはさほど難しいことではない。けれども、それをつくるのは甚だ厄介だ。そして、飛ばすのはもっと大変だ。」オットー・リリエンタール(1848~1896))
これが、航空技術の原点だと私は考えます。

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