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宇宙航空研究開発機構

回転翼機の発展の歴史-航空機として飛ぶ工夫(2)-

JAXAメールマガジン第210号(2013年11月20日発行)
齊藤茂

こんにちは、ヘリコプターを研究している齊藤茂です。今回は、前回に引き続き回転翼機について考えてみます。

前回は、ヘリコプターが自在に飛べるようになるための3つの発明を説明しました。すなわち、(1)フラッピング・ヒンジ(間接型ヒンジ・ロータ)、(2)反トルク装置(テール・ロータ)、(3)可変ピッチ機構です。
これらの機構は、不変ではありません。現在では、フラッピング・ヒンジは、あまり使われておりません。機構への理解と材料の進歩は、もはやブレードが剛とされる時代の機構の考え方を大きく変化させました。すなわち無間接型ロータ(ヒンジレス・ロータ)の出現です。これは、文字通り関節をもちません。一つの方向すなわちピッチ角を変化させる方向のみ動かせる機構を発明しました。この運動をフェザーリング運動といいます。間接型ロータでは、ブレードのサイクリック・ピッチ角を変化させてロータの回転面を変化させそれによって機体全体を前後左右に動かします。このとき、ロータに作用するときの力は、ブレードのサイクリック・ピッチ角を入力した位置に比べ、約90度遅れて作動します。この遅れは、ヘリコプターを操縦する際の「のろさ(sluggish)」に関係します。
一方、無間接型ロータは、ピッチ角の入力そのものがロータ面の変化に瞬時に作用するため、ロータの反応がものすごく速くなります。この結果、ヘリコプターでも宙返りなどのアクロバット飛行が可能となってきました。今までの常識が覆された瞬間でした。現在では、複合材の進歩によりヒンジの全くないヒンジレス・ロータも出現しております。これによって、構造上の寿命が著しく延びてきております。
反トルク装置は、メイン・ロータが回転することによって生じる機体をまわそうとするモーメントを打ち消す装置のことをいいます。モーメントを打ち消すという考え方から、色々な装置が考案されてきています。先ずはシンプルなテール・ロータです。このテール・ロータはパイロットが足でペダルを踏んで推力の調整をします。大きな推力を発生しようとすると、ブレードが面外運動(フラッピング運動)を発生させます。このとき、ブレードのピッチ角を自動的に変化させる機構がデルタ3(δ3)ヒンジです。フェザーリングを起こさせるヒンジを通常45度傾けておくことで、プラッピング角度分だけピッチ角が減少する仕組みです。この種のテール・ロータは、整備中の事故を良く起こしたため作業中には特に注意を喚起して作業をするのですが、これを少しでも和らげようとしたものが、フェネストロンです。これはテール・ロータをすっぽりダクトで囲ってしまうものです。こうすることで、整備中に人がぶつかったりする事故が随分少なくなりました。

さて、反トルク装置というのは、メイン・ロータが必然的に作り出すトルクを抑えようとするものです。では、必ずしもロータに頼らなくても良いのではないかという発想で誕生したのが「ノーター(NOTAR)」です。マクダネル・ダクラス・ヘリコプターズ社が考案したものですが、原理はこうです。テール・ブームの付け根付近から空気を取り入れ、後方に向かって送風します。ブーム途中で側面から下方に気体を吹き出す(サーキュレーション・ジェット)と、メイン・ロータからの強力な気流はテール・ブームに沿って曲げられます(コアンダ効果)。さらに、ブームの末端から横方向に気流を吹き出す(ダイレクト・ジェット)ことでさらに横への力を発生させます。この空気の速度や流量を調節することによって、ブーム周りの流れの対称性を崩し、その結果として横力を発生させるのがこのノーターの大きな特徴です。こうなると、もはやテール・ロータは必要ありません。今までのヘリコプターの概念が、どんどん変わってくるではありませんか?

今回は、ヘリコプターが誕生した時代からの各装置の変遷に着目しました。ただし、ブレードのピッチ角を変える機構はいまだに変わってはいません。次回は、ヘリコプターのもつ様々な課題についての話をしましょう。

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