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宇宙航空研究開発機構

小さくても無視できない効果

JAXAメールマガジン第228号(2014年9月5日発行)
上野真

風洞技術開発センターの上野 真です。第219号に引き続き書いちゃいますよ。前回、私の記事が載ったのは4月21日なので、すっかり内容をお忘れではないでしょうか? 何を隠そう、私は忘れています! 最近の忘却能力の著しい向上に、新たな可能性を感じる毎日です。

というわけで復習してみたら、飛行機は空気の力だけで飛んでいるので、風洞という装置を使って飛行機に働く空気の力に関するデータ(略して空力データ)を得ているということでした。さらに、空力データを効果的に活用する方法を研究するのが私たちの仕事です、と書いていますね。さて、では「効果的に活用する方法」って、どんなことでしょうか?

私がよく仕事をしているJAXAの遷音速風洞は日本で開発された航空機の多くが設計に使っている風洞です。そんなすごい設備だったら、出てきたデータがそのまま飛んでいる飛行機のデータになっていると思いますか? 実は、そんなことはありません。何故でしょうか?

風洞というものはなるべく飛んでいるときの飛行機の周りの空気の流れを再現できるように作られています。でも、この「なるべく」というのが曲者(くせもの)で、どうやっても飛んでいるときの状態を再現できない部分があります。

たとえば、風洞というのは基本的には鉄の筒です。筒の中に飛行機の形をした模型を入れて、模型に働く空気の力を計測します。筒ということは流れる空気の周りには壁があるということですね。飛行機が飛んでいるときにはもちろん壁はありません。この壁、「なるべく」影響が無いように作られてはいますが、やはり飛行機の周りの流れは影響を受けてしまいます。

風洞試験にはこのような要素がたくさんあります。使用する模型の大きさが小さいことで、空気の粘り気の効果が実際よりも大きく出てしまうこともありますし、速い風が及ぼすとても大きな空気力のせいで試験中の模型が思った形状から変形しているときもあります。模型にかかる空気の力を支えるための模型支持装置は、もちろん模型の周りの空気の流れを変えてしまいます。

ということは、何もしないでそのままのデータを出してしまったら、せっかくやった風洞試験もその価値が減ってしまうことになります。本当の値とは違うせいで、間違った結論を導いてしまうかもしれません。なので、風洞試験の結果を効果的に活用するためには、たくさんの「実際の飛行機の周りの流れとの違い」をもたらす要因を、どうやって補正したら意味のある結果を導くことができるのかを研究しなければなりません。

そして、近年の技術の進歩、特に数値シミュレーション技術や計測技術の進歩によって、新たに補正が可能になってきた量もあります。風洞試験にはとても長い歴史があるのですが、このような技術の進歩と歩調を合わせて、よりデータを効果的に使えるように、弛まぬ努力を続けているのですね。ん? この、実験とシミュレーションの関係って、どうなっているんでしょうね? 気になりますね。では、(次回があれば)その辺をお話ししてみたいと思います。

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