空の旅、最近気になること。

2019年12月20日
星 光

困りました、困りました。

エッセイやコラムのたぐいは苦手なのです。

普段、何も考えずに生きているので、特に何か訴えたいこともなく、この文章の締め切りを前に、冷や汗が出てきてしまいます、、、。助けて―!
お願いだから、私にこのような難しい宿題を出さないで下さい!!!

以上、本当に言いたいことは書いてしまいましたので、何とか文字数を埋めるべく、話題を考えてみます。

最近、お出かけが連続して飛行機に乗る機会が多かったのですが、そこで気になったのが「Flygskam、Flying shame:飛び恥」という言葉です。読者の皆様もご存じであろうこの言葉、「CO2の排出が大きい航空機の利用はやめて、鉄道や船に乗ろう!」というスウェーデン発の環境運動です。
とはいえ、海外に出かけて行くのに、飛行機の利用が制限されると、現実的にはとっても困った事になります。他方、CO2の排出が問題であることに変わりはありません。
普段、何も考えずに航空機研究を生業としているので、特にすばらしい解決策もなく、このような課題を前にすると、冷や汗が出てきてしまいます、、、。助けて―!
お願いだから、私にこのような難しい課題を出さないで下さい!!!

すみません。話がループしてしまいました。

私も大学生の頃は、環境問題や現代技術のあり方について、イッチョウマエに周囲に議論をふっかけては、迷惑がられていました。それが今や、何にも考えない脳留守中年になってしまいました。やれやれ。
とはいえ、飛び恥という言葉や、環境活動家のグレタ エルマン トゥーンベリさんの訴えを聞くと、何だかひどく落ち着かない気分になり、気持ちがソワソワしてしまいます。しかし、「それじゃあ、オイラもいっちょう金曜日に環境ストライキでもするか!」というのも何だか違う気がするのです。
若い方が、「大人たちは、金銭的利益や享楽のためにCO2を排出し、子供たちの未来を盗んでいる!」と主張するのは、もっともなことだと思います。
他方、現下の情勢に一定程度の責任を持つ中高年には、この主張に賛同こそすれ、一緒に主張することは難しいと思われます。
何時だったか、「若いころに革命を訴えない人は心無い人であり、歳をとってから革命を志す人は能の無い人である。」という文句を何かの本で見かけました。大意としては、若いころには輝かんばかりの理想をかかげ、歳をとっては現実に影響を与える地道な具体策を推し進めるべし、ということでしょうか。
輝かんばかりの理想は、トゥーンベリさん方が提示してくれました。では、「現実に影響を与える地道な具体策」があるとすれば、それはどんなものなのでしょうか?
このコラムを書いている私や航空関係者の方は普段のお仕事を頑張るとして、それ以外にも何かより簡便な手立てがあれば嬉しいですよね。

その方法は、いくつか考えられますが、私が思いつく手立ての1つは、

  • 燃費の良い、最新鋭の航空機に搭乗すること。

読者の皆様はすぐに理解できると思いますが、最新鋭の航空機は燃費を改善するための多くの研究・開発成果が盛り込まれています。すなわち、CO2の排出量も改善されているわけです。ニューヨーク・タイムズ紙が紹介した国際クリーン交通委員会(ICCT)の調査(※1)によると、古い機材を用いた航空会社は、最新鋭の航空機を揃えた航空機会社より、26%から60%も多くの燃料を消費するそうです。ご自分が乗られる航路の機材を確認し、航空会社を選択するのも一つの手立てですね。

次の手立ては、

  • カーボンオフセット制度が存在する航空会社の便に搭乗すること。

先日、オランダに行ったのですが、その際にはKLMオランダ航空さんの便に搭乗させて頂きました。KLMオランダ航空さんは、環境問題を重要視(※2)することで有名ですが、なんと飛び恥を推奨する珍しい?航空会社でもあります。彼らは、比較的短距離の移動に関して、なんと鉄道や船舶など航空機以外の交通機関の利用を推奨してます。航空会社なのに!
さらに、KLMオランダ航空さんでは、乗客が追加の費用を自己負担することにより、乗客のCO2排出分に見合うだけ、世界の環境プロジェクトへ寄付する制度があるそうです。私もこの制度を利用し、CO2を相殺する試みに参加してみました。なんだか、気分がチョットよい感じになりますよ。うふふ。


さてさて、やっと文字数が埋まって参りました。
「結局、お前の研究は、環境問題にどう役立っておるのだ?」というご質問には、せっかくごまかした冷や汗がまたまた流れ落ちてしまいますので、三十六計逃げるにしかず!
「あいや暫く!」という方には、本コラムのバックナンバーをあらためてお読み頂けると、様々な解決策やヒントが見つかると思います。すてきなコラムがたくさん読めますよ。

ということで、この辺りで失礼させて頂ければと存じます。
ではでは。。。

    <参考文献> ※外部サイトへリンクします
  1. The Asahi Shimbun Glove, ニューヨークタイムズ 世界の話題, フライトが「飛び恥」と言われる時代 空の旅について私たちができること, 2019年11月25日
  2. 持続可能な空の旅について - KLM.com