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宇宙航空研究開発機構

特集「電動航空機」
特集「電動航空機」

2018年12月18日更新

第2回 電動化する理由
~世の中で進む航空機エンジンの電動化~

今回は、最近なぜ世界各国で電動航空機が研究されるようになったのかを見ていきます。

古くは鉄道の世界で電車が、近年では車の世界で電気自動車やハイブリッドカーが開発され少しずつ普及してきました。現在は、航空や船舶の分野で電動化の研究が進み、航空機でもアメリカ航空宇宙局(NASA)や航空機産業関連メーカーなどによる電動化のニュースを目にするようになりました。

地球環境保全のため、CO2の削減要求が高まった

電動航空機が注目されている理由の一つは、地球温暖化問題です。二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減は、地球の環境を守るためにも急務となっています。これは航空分野にも関わってくる課題であり、ICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)では、航空機からのCO2総排出量を2050年には2005年時点の50%にまで削減する目標を立てています。一方で、航空旅客需要は今後20年間で約2.4倍に増大すると予測されており、このままでは目標をクリアすることができません。

航空機によるCO2排出量の削減シナリオ
WORKING PAPER DEVELOPED FOR THE 38th ICAO ASSEMBLY Sept/Oct 2013
“Reducing Emissions from Aviation through Carbon-Neutral Growth from 2020”の図を元に再作成

上の図は航空機のCO2排出量を予測したものです。ジェットエンジン燃料である化石燃料をこのまま利用し続けて技術的な改善も行われない場合、2050年には化石燃料によるCO2排出量は今よりもかなり増加してしまいます。

これまでにもCO2排出量を減らすために燃費をよくする技術の研究や機体への応用は行われてきました。機体の空気抵抗を減らす形状の研究、エンジンの改良、ターボファンの口径の大型化などや、航路の最適化、効率化などです。しかし、このような従来技術の改善だけでは限界があり、CO2排出量の半減は実現できません。

削減目標を達成するには、従来の技術と異なる新しい技術による革新が必要となります。そこで注目されているのが脱化石燃料化、代替燃料によるバイオ燃料や水素燃料、そして電動化などの技術です。

これらの取り組みの中で、現行の航空機をベースに改良を進められる電動化技術は、世界各国の研究機関で研究開発が進められています。

電動化への世界の取り組み

海外で行われている電動航空機の研究をいくつか紹介しましょう。

ボーイング社はさまざまなタイプの電動航空機の研究を進めています。その一つは、機体後部に電動ファンを設置する亜音速機のハイブリッド航空機です。また、ベンチャー企業と電動航空機の研究開発を進めています。ボーイング社が出資している電動航空機ベンチャーのズーナム社は、エアラインから発注された12人乗りのハイブリッド機ZA10を製造中です。2020年代初めに就航予定とされています。

海外でも研究が進む電動航空機の一つ。全翼機をコンセプトとしたNASAの「N3-X」(C)NASA

エアバス社はハイブリッド方式の実証機E-Fan Xの飛行試験を2020年に実施する予定です。E-Fan Xは、エアバス社がシーメンス社、ロールスロイス社と共同で進めているものです。これは、4基のジェットエンジンのうち1基を電動ファンに置き換えるというものです。

シーメンス社は電動航空機の開発に力を入れています。2018年4月には同社の発電機とモーターを用いたシリーズ・ハイブリッド式電動航空機の試験飛行を行っています。また2018年10月にはダイアモンド・エアクラフト社と共同開発した電動航空機の飛行試験も行っています。

NASAでもさまざまなタイプの電動航空機の研究が進んでいます。150人乗りクラスの電動航空機で見ると、パラレル・ハイブリッド方式を採用するSUGAR Voltや、シリーズ・ハイブリッド方式を採用するSTRAC-ABLなどがあります。さらにこれらの先を見据えた電動航空機の姿として、全翼機をコンセプトとしたN3-Xなども発表しています。

※:胴体部や尾翼がなく、主翼一枚のみによって機体全体が構成された航空機。抵抗になる胴体部や尾翼がないことから理論的には理想的な形状と言われているが、不安定性への対処などの課題もある。


次回は、JAXAが将来像として描く電動化航空機がどのようなものかを紹介します。

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