三木 肇

空力技術研究ユニット 再突入熱空力セクション 研究開発員
2015年4月入社

1987年生まれ。2010年3月東京農工大学工学部機械システム工学科卒業。2015年3月東京農工大学大学院工学府博士後期課程修了。2015年宇宙航空研究開発機構入社。大学では超音速旅客機用エンジンインテークの空力設計技術について研究。入社後、再突入カプセルの熱空力予測に関する研究に従事。

超音速旅客機も再突入カプセルもきっかけは風洞でした

― JAXA航空技術部門を目指したきっかけを教えてください。

まず、空力に興味を持ったきっかけは、高校生の頃たまたま風洞実験の様子をテレビ番組で見たことです。煙を使って空気の流れが非常にきれいに見えたのが印象的でした。そして、模型の形状を変えると流れの様子が変わり、そのことが機械の性能に直結することを知りました。そこから風洞実験をやってみたいと思って工学部に進学し、大学4年生で研究室を選ぶ際は、風洞があるという理由で流体力学の研究室を選びました。
そして、大学では超音速旅客機用のエンジン空気取込口(インテーク)の空力設計について、JAXA大型風洞や数値流体シミュレーションを使いながら研究をしました。その中で、飛行機の性能を良くするには、翼や胴体などの機体上にどのようにエンジンを搭載するかという機体/推進系統合設計が重要であることを知りました。インテーク設計もその鍵となる技術の一つで、エンジンだけでなく機体の性能についても考えながら総合的に優れた設計を達成するという点に面白さを感じました。
その研究を通じて多くのJAXA研究者の方と出会い、研究だけでなく技術の立場からさまざまなマネジメントも担当していることを知りました。私はもちろん研究することが好きなのですが、仕事としてはそれ以外の面からも日本の航空機産業発展のために働きたいと思っていました。なので、研究とマネジメントの両面から航空の未来をつくる仕事ができるJAXAを目指すようになりました。

― 現在たずさわっている研究とそのやりがいについて教えてください。

入社時から、国際宇宙ステーションから科学実験サンプルなどを地上に持ち帰る大気圏再突入カプセルの研究をしています。再突入カプセルの研究で扱うのは、超音速よりさらに速い極超音速という空気の流れです。大学までとは注目する流体現象が異なり、空力研究者として幅が広がるのでやりがいを感じます。そしてわずかですが小型回収カプセルプロジェクトに協力できたのは良い経験でした。また、超音速旅客機の研究にも2017年から再びたずさわっています。

― 現在の研究は、大学時代の研究テーマとつながっていますか。

JAXAでは超音速旅客機の先に極超音速旅客機の実現を目標として掲げています。将来その研究開発過程で機体/推進系統合設計の良しあしを判断できる技術が必要になると考えて、極超音速風洞を使ってエンジンが稼働した状態での空力性能が測れるようになる試験技術の開発を新たに始めました。これは学生時代からの興味にも沿って、自身で設定した研究テーマです。こういった新しい研究に積極的にチャレンジできる雰囲気や制度があることはJAXA航空技術部門の良いところだと感じています。

― 今後やりたい研究は。

まずは超音速旅客機、ゆくゆくは新しい世代の飛行機を実現したいですね。航空関係者ではない一般の方にも、これは新しいと一目で思ってもらえるような飛行機を世の中に登場させたいです。将来は機体とエンジンのインテグレーションの仕方も変わってくるはずです。そういった自分の得意な研究分野でまずは蓄えてきた力を発揮したいです。そして、JAXAに限らず多くの仲間と協力して飛行機の新たな姿を日本から世界に打ち出したいと思っています。

― 航空分野を目指す人にメッセージをお願いします。

航空の面白さは、空力やエンジン、構造材料、飛行制御など幅広い技術分野が密接に関わり合うことだと思います。また、複数の分野の間に立って考えたり、今まで関係が薄かった分野と連携することでまだまだ新しい発見や技術向上があるはずです。なので、飛行機好きにはもちろん、現在興味を持っていることが飛行機に関係しているとは思っていない人にも、航空分野が将来活躍できるステージなのだとぜひ考えてほしいです。

極超音速風洞の制御室にて

このインタビューは、JAXA航空部門広報誌「FLIGHT PATH No.18」からの転載です。
所属・肩書などは取材当時のものです。

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