ヒューマンファクタ技術

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パイロットのヒューマンエラーを防止する技術の研究の1つとして、JAXAではこれまでDRAP(日常運航データ再生ツール)を開発し、現在エアライン各社で使用されています。DRAPとは、飛行データを取り込んでパイロットへ運航状況をフィードバックできるシステムです。主に将来の運航安全性を向上させるためにエアライン各社が行っている、DFOM(Daily Flight Operation Monitoring)やFOQA(Flight Operational Quality Assurance)といった活動に利用されることを目的としています。更にDRAPの技術は各種のシミュレーション、飛行再現、無人機操縦端末として広く飛行システム分野で利用されており重要な基盤技術にもなっています。
ヒューマンエラーを防止するための他のツールとして、エアライン各社ではCRM(Crew Resource Mangement)訓練が普及していますが、特に初期訓練においてどのように実践していくか課題が多く、訓練現場の混乱を招いているのが現状です。
更に、ヒューマンエラーを防止するためには、実際にパイロットが操縦時に確認する計器・ディスプレイの表示方法も重要です。コックピット計器とは別に設置される補助的ディスプレイは、耐空性の観点からはグレーですが、今のところ航空局からも明確な基準が提示されていません。近年この種のディスプレイに対する安全性の要求が厳しくなってきていますが、必ずしも人間工学的に妥当な方法となっていない可能性があります。
これらさまざまなヒューマンエラー防止ツールについてこれまで別々の分野の課題として研究されてきましたが、本研究では、これまでのJAXAの航空人間工学研究の経緯と成果、並びに運航・航空機製造現場での課題を鑑み、ヒューマンエラー、疲労、状況認識、ノンテクニカルスキル等のさまざまな計測指標について横断的に矛盾無く計測するための指標体系を構築することを目的します。

日常運航データ再生ツール(DRAP)

航空機に搭載されているデータレコーダーに記録された約100項目に及ぶデータを分かりやすく表示する「日常運航データ再生ツール(DRAP: Data Review and Analysis Program)」を開発しました。
DRAPは、日常運航において取得した飛行データをパイロット等へフィードバックすることで、将来の運航安全性を向上させるためにエアライン各社が行っている、DFOM(Daily Flight Operation Monitoring)やFOQA (Flight Operational Quality Assurance)といった活動に利用されることを目的としています。DRAPの利点は、飛行データをアニメーションとして可視化することで、パイロットが自分の飛行の様子を直感的にレビューすることが可能となる点です。

CRMスキル指標の研究

近年、航空機事故やインシデントの約70%弱が人的要因に関与すると言われており、この人的要因にかかわる事故防止の有効な手段であるCRM(Crew Resource Management)訓練がエアライン各社で実施されています。CRMとは安全で効率的な運航を達成するために全ての利用可能なリソースを活用することと定義されています。
JAXAはCRMを実践する能力であるCRMスキルに焦点を当て、教育訓練や日常運航でCRMを実践する行動の指標となるCRMスキル行動指標の開発や、 CRMスキルが本当に実践されているかを計測するための計測指標を開発する研究を行ってきました。提案のスキルは大まかに5種のスキルに分類されます。その分類の中に各スキルの構成要素が存在し、行動指標は各構成要素の下層に位置します。

2019年12月13日更新