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宇宙航空研究開発機構

徳川 直子

1967年生まれ。1990年3月学習院大学物理学科卒業。1995年3月東京農工大学大学院博士後期課程修了。東京大学大学院研究生、科学技術振興事業団科学技術特別研究員(派遣先航空宇宙技術研究所)を経て、1997年10月航空宇宙技術研究所入所。2013年から現職。

――研究されている「自然層流翼設計」とはどのような技術なのでしょうか

航空機の燃費を向上させるためには、その航空機の空力抵抗、特に摩擦抵抗を抑える必要があります。機体表面には境界層と呼ばれる数十mmにも満たない層状の流れがあります。境界層中の空気の流れは、翼の前縁付近では滑らかな層流状態ですが、後縁に向かうに連れ徐々に乱れ、乱流と呼ばれる摩擦抵抗が増大した状態に変化します。私は主翼や機首部分で層流の領域を維持できる形状を作る研究をしています。

――ずっと流体力学・空気力学に関する研究に携わられてきたのですか

大学院では流体力学を理論的に研究していました。その後科学技術振興事業団の特別研究員(いわゆるポスドク)としてJAXAに来てからは、実験を通じで空気力学、特に境界層流れの研究をしています。1997年に入社後しばらくして小型超音速実験機「NEXST-1」のプロジェクトに加わり、模型による風洞実験や実験機を飛ばした飛行実験で自然層流翼の計測を行いました。機体表面がザラザラだと層流翼設計の効果を正確に計測できないので、実験前には汚れのないツルツルな状態にしなければなりません。ですからNEXST-1の飛行実験では、いつも実験機のそばに張り付いて機体状態の確認をしていたため、NEXST-1のことは、つい“ウチの子”って言ってしまうくらい思い入れも強くて、2005年に飛行実験が成功したときには本当に嬉しかったですね。
現在はこの自然層流設計の技術を、実際のナローボディの旅客機から小型の超音速旅客機まで拡張できるよう研究しているところです。また実際に運航される航空機は、常にツルツルな状態にしておくことはできないので、出来るだけ汚れにくくきれいな状態をキープできるようにすることも研究課題です。

――大学院で流体力学を専攻されたきっかけはなんですか

実は、大学時代は理学部の物理学科で、統計力学の研究室にいました。大学院で流体力学の道に進もうと思ったのは、子どもの頃の経験があったからかもしれません。水を撒くときにホースの先から管の形のまま出た水が、ブツブツと切れて玉になるでしょう?あれが面白かった。何でそのままの形じゃないのだろうと思って聞いたら、親が「それは表面張力って言うのよ、流体力学よ」と教えてくれました。
中学時代から歌舞伎観劇が趣味で、大学の歌舞伎サークルに入ってからは演じることもありました。おかげで学会発表などの場で人前に立つことも苦ではありませんし、短い時間で集中するコツも身につけましたね。

――女性としてJAXAは働きやすい環境ですか

女性が働きやすい制度は非常に整っていますし、働く環境としては決して悪くありません。男女共同参画推進室にも参加し、男女を問わず働く環境がより良いものにしたいと思っています。女性同士の繋がりを強くするために調布航空宇宙センター在勤の女性研究者の交流会、いわば「調布女子会」のようなものも開いていて、そこで出産とか子育てなどの情報交換をしています。

――将来の夢を教えてください

近い将来の夢としては、JAXAの技術力をアピールできるような、空気抵抗を低減した燃費の良い航空機の設計に携わりたいですね。遠い将来の夢としては、子どもたちに胸を張って言えるような、何か災害があったときに救助に行ける、あるいは取り残された人たちをすばやく保護できるような技術を実現できればいいなと思っています。

――これから航空分野の研究者を目指す後輩たちにアドバイスはありますか

自分で考える力を身につけることです。実験ではなかなか思ったようなデータが出ません。その時になぜそうなったのか原因を推察し、どのように改善すればよいデータを得られるか対策を導けるようになることが大切だと思います。

NEXST-1の前で


このインタビューは、JAXA航空部門広報誌「FLIGHT PATH No.7
からの転載です。所属・肩書などは取材当時のものです。
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