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宇宙航空研究開発機構

平野 義鎭

1979年生まれ。2002年3月東京工業大学機械宇宙学科卒業。2005年3月東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。JAXA宇宙航空プロジェクト研究員を 経て、2008年宇宙航空研究開発機構入社。現職に至る。複合材技術研究センター、D-SENDプロジェクトチーム、航空技術実証研究開発室(FEATHERチーム)併任。

――複合材料の研究をされているということですが、具体的にはどのような研究なのでしょうか。
 軽くて丈夫な材料・構造であることが非常に重要な航空宇宙分野で、複合材料は非常に優れた特性を持った材料です。その複合材料の特性をうまく引き出せるように設計する「最適設計」が私の主な研究分野です。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)のような複合材料は炭素繊維と樹脂からなるシート状の材料を何層も重ねたものですが、航空機に適した性能を持たせるためには、繊維の方向や部材の形状など最適な設計をする必要があります。またCFRPは電気や熱をあまり通さないため、従来の金属材料とは異なる新しい問題が出てきていて、例えば飛行中に雷がCFRPの機体に落ちると大きな損傷が発生してしまうことがあります。雷のような大きな電流や熱が加わっても大きな損傷を起こさない、安全な構造を実現するための研究もしています。

――D-SENDプロジェクトにも参加されていますね。
 D-SENDプロジェクトに使用する機体は、複合材料ではなく金属のアルミで作られていますが、私は機体の構造設計を担当しました。将来に向けJAXAで研究している次世代小型超音速旅客機では、複合材料を使うことが検討されていて、そちらの構造設計の検討も担当しています。次世代小型超音速旅客機の機体は、抵抗が少ない薄い翼やソニックブームを抑えるための複雑な曲面形状が求められます。それは材料や構造には大変厳しい条件なのですが、その中でも航空機として丈夫で軽くなくてはいけません。
 複合材料は、航空機や宇宙機の構造材料としてはもちろん、さまざまな分野で注目されていて、JAXA内でも航空本部に限らず、さまざまな本部から複合材料をこんな目的に使えないかといった質問や、意見を求められたりします。JAXAは横のコミュニケーションが盛んで、他の研究をされている方々と意見交換していると新しい発想が生まれることもあり、非常に刺激になります。

――航空宇宙分野を目指したきっかけは何ですか。
 そもそも航空宇宙がとても好きな子どもでしたが、この分野に進んだ大きなきっかけの一つは、高校時代に「サマー・サイエンスキャンプ」で、JAXA(当時は航空宇宙技術研究所)のプログラムに参加したことです。宇宙往還機を想定した耐熱材の高温試験を見学させてもらった時、真っ赤に光る耐熱材を見ていると、研究者の方から「世界最高記録を更新している、まさにその瞬間だよ」と聞いたことが、強く印象に残りました。 もう一つのきっかけは「鳥人間コンテスト」に参加したことです。私が設計担当としてチームに参加した当初は複合材料のパイプを手作業で作っていたのですが、なかなか品質の良いものができず、結果を残せないでいました。大学の研究室や企業に複合材料のことを聞きにいったり調べたりして、軽量な複合材料を使えるようになったことで、優勝できるチームになりました。その経験から、もっと複合材料を突き詰めて研究したいと考えました。

――今後取り組んでいきたい研究テーマはありますか。
 これまでの複合材料は、金属材料の単なる置き換えという使い方が大半でした。最新の航空機や宇宙機では複合材料が多く使われていますが、構造は金属材料の時と根本的に変わっていません。しかし、複合材料の特性に合った、複合材料ならではの形状・構造があるはずと考えています。この3月からドイツのエアバス社に1年間留学する予定なのですが、ドイツは複合材料の製造技術が進んでいて学ぶこともたくさんあり、新しいことへチャレンジできそうです。

――航空宇宙分野を目指す後輩たちに一言お願いします。
 興味を持ったことに向かって、まっすぐ進むことが一番大切だと思います。JAXAで活躍している研究者の方は、皆さん光るものを持っています。それは本人が本当に好きなことをやっているからです。自分が本当に面白いな、興味深いなと思うことを一所懸命に続けていれば、チャンスはおのずと近づいてくるものだと信じています。

複合材料で作製した桁の前で


このインタビューは、JAXA航空部門広報誌「FLIGHT PATH No.8
からの転載です。所属・肩書などは取材当時のものです。
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