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宇宙航空研究開発機構

航空エンジンへのセラミックの適用

JAXAメールマガジン第207号(2013年10月7日発行)
鈴木和雄

JAXAメールマガジン第198号に続きまして、航空エンジンの話をします。
航空機から排出されるCO2は全体の約2%と少ないですが、大気の高高度で出され地球の熱放射に影響を与えると考えられ、気候変動を防ぐ上で燃料消費の少ない航空機が求められています。
そのための効果的な方法の一つは、新材料を適用することです。機体では炭素繊維系複合材による軽量化で性能向上が進んでいます。
航空エンジンでも新材料の適用で高性能化を実現する研究開発が進められていて、JAXAでも重要な研究課題として今後注力する計画を持っています。代表的なものにセラミック複合材(CMC)があり、金属より高温に耐えるので、タービンや燃焼器に適用して性能を大きく向上できると期待されています。
実は、セラミックをガスタービンの高温部材に適用して性能向上を目指したプロジェクトは25年ほど前にも実施され、筆者も燃焼器へのセラミック適用の研究に従事しました。ただし、同じセラミックでも最近検討されているのは、セラミックファイバーを3次元に織って形状を作りそれをセラミックで固めるCMCと呼ばれるものですが、以前に開発を目指したものは均質なセラミックを部品に焼成したもので、いわば陶磁器と同じです。小型部品ならば破壊しにくいので小型ガスタービンには使用できそうだとの見通しで研究開発が進められました。この研究開発に参加して、次の印象が強く残っています。
第1に研究開発手法を変える必要がありました。例えば、燃焼器の壁面の温度計測は、金属の場合には熱伝対を埋め込むことで計測できましたがセラミックでは使えません。また、セラミックは孔開けなどの加工が難しいため、形状決定に金属製ライナーを併用して試験しました。
第2に設計の考え方への影響です。製作し易い形状と性能からの最適形状との妥協が求められ、前者の比重が増すことです。セラミックを使う利点が形状の制約による損失を上回るからです。
均質セラミックの適用を目的とした以前のプロジェクトでは、部材の破壊予測の信頼性が十分でなく残念ながら実用化にいたりませんでした。しかし、今後開発されてゆくセラミック複合材の強度には信頼性や安全性が期待できそうです。
新しい材料の実用化は新たな可能性を開き、性能を飛躍的に向上するので、航空エンジンへのCMC適用の研究開発に期待をもっています。

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