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宇宙航空研究開発機構

スケールモデルを用いた飛行実験(前篇)

チーフエンジニア室の柳原です。初めての投稿です。よろしくお願いします。 今回は無人機の話をさせていただきます。最近、いわゆるドローンと呼ばれる小型の無人機がいろいろと話題になっていますが、JAXAでもこれまで無人機を用いた研究開発を行ってきました。その中の一つに、実機を作る前に小型のスケールモデルを用いて実機の飛行を再現し、そのような飛行が可能かどうか確認する飛行実験があります。 1990年代から2000年代にかけて、米国のスペースシャトルの日本版といえるHOPEの研究開発を行っていました。その中でいくつかの飛行実験を行いましたが、その一つに小型自動着陸実験ALFLEXがあります。

小型自動着陸実験「ALFLEX」

HOPEの形状は、スペースシャトルに比べて、大気圏に再突入する高速飛行の際に有利な形状としましたが、そのために着陸時の低速飛行では不利な飛行特性となりました。また、HOPEは、人が乗らず、コンピュータによる完全自動飛行方式を採用しました。そのため、このような低速飛行が難しい形態の機体を、人の力に頼らず、完全自動で、うまく着陸させることができるかどうかが大きな課題でした。そこで、HOPE実機のスケールモデルを用いて、自動着陸を実証しよう、というのがALFLEXです。HOPEはスペースシャトルと同じく、着陸の際にはエンジンを使わず、滑空飛行を行いますので、ALFLEXでは実験機をヘリコプタで吊して上空まで持っていき、滑走路の手前で分離して、あとは実験機に搭載されたコンピュータが自動制御し、滑走路に着陸させる方式としました。

さて、このようなスケールモデルを用いて実機の飛行を再現する場合、実験機の「形状」は、実機をスケールダウンした形状にする必要があることはもちろんですが、それ以外にもいくつか制約があります。例えば、同じスケールモデルでも、材質を発泡スチロールにするか、鉄にするかで、全く飛行が変わってくることはお分かりいただけると思います。原理の説明は省きますが、スケールモデルの「質量」はスケール比の3乗にすることが必要です。すなわち、例えば実機の全長が10m、質量が10tで、その1/4スケールの実験を行う場合、モデルの全長は10m×(1/4)=2.5mですが、質量は、10t×(1/4)3=156.25kgにすることが必要です。これより重くても軽くても実機とは異なる飛行になってしまいます。この質量は、物体の並進運動に影響します。同じ力をかけても、重いものは動き難く、軽いものは動きやすい、ということは経験されているでしょう。 同じように物体の回転運動に影響するのが「慣性モーメント」です。慣性モーメントは物体の質量分布によるのですが、スケール実験では、これにも制約があり、スケール比の5乗にすることが要求されます。苦労して実験機の質量をスケール比の3乗に合わせても、その質量が胴体に集中していて、翼が軽すぎたりすると慣性モーメントが小さく、実機より回転しやすくなります。質量と慣性モーメントの両方を合わせることは、なかなか大変ですが、これをしなければ、単なるお遊びになってしまうのです。

(柳原正明)

後編へ続く(2016.09.05更新)

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