超音速機設計技術の研究開発

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現在の航空機は音速(マッハ1)よりも少し遅い、マッハ0.8程度で飛行しています。航空機はとても速い移動手段ですが、それでも日本から欧米までは12時間以上かかります。もし音よりも速く、例えば現在の航空機の2倍の速度になれば、飛行時間は半分になり、日本から欧米まで6時間ほどで行けます。

移動時間が短縮されれば、ビジネスや観光などの経済活動が活発になり、災害などの緊急時の対応が迅速に行えるなど、より安心で豊かな社会の実現が期待できます。さらに、飛行時間が6時間以内であれば、エコノミークラス症候群の発症が抑えられることから、誰でも今よりも気軽に楽な旅行ができるようになります。

このような高速移動を可能にする航空機は、音よりも速く飛ぶことから、超音速旅客機と呼ばれます。

超音速旅客機による恩恵は大きいにもかかわらず、2003年のコンコルドの退役以降、その後を継ぐ超音速旅客機は現れていません。コンコルドは燃費が悪いことにより運航コストが非常に高いことが問題でした。また超音速飛行すると大きなソニックブームが発生することから、陸地上空を超音速飛行することができず、路線が限られてしまったことも、ビジネスとして成功しなかった一因でした。

コンコルドが抱えていた技術課題を解決するための研究開発が進み、2010年代以降は超音速旅客機開発の機運が高まっています。それを受けて、国際民間航空機関(ICAO)において、陸地上空の超音速飛行実現に向けた国際的なソニックブームの基準策定の議論も進んでいます。

近い将来に期待される次世代超音速旅客機の国際共同開発に向けて、JAXAは独自の機体コンセプトの提示と得意技術の実証を通じて、日本と世界の航空機技術の発展に貢献します。

低ブーム設計技術を適用した超音速旅客機のイメージ図

低ブーム設計技術を適用した超音速旅客機のイメージ図

小型超音速旅客機概念

JAXAは、2016~2020年度に実施した「静粛超音速機統合設計技術の研究開発」事業において、飛行マッハ数1.6、乗客数50人、離陸重量70トンクラス、航続距離3,500nm(約6,300km)以上の小型超音速旅客機を想定し、その実現の鍵となる技術目標を定めて、小型超音速旅客機の概念機体の設計を行いました。

ソニックブーム

航空機が超音速で飛行すると、機体各部から衝撃波が発生します。これらの衝撃波は大気中を長い距離伝播するに従い統合し、地上では2つの急激な圧力変動を引き起こすN型の圧力波形となります。これが「ソニックブーム」で、人には瞬間的な爆音として聞こえます。


超音速機プロジェクト

JAXAでは、静かで環境にやさしい次世代超音速機実現の鍵となる技術の研究開発を行い、その技術を実証するプロジェクトを実施しています。

Re-BooTプロジェクト(2024年度~)

Re-BooT(ロバスト低ブーム超音速機設計技術実証)プロジェクトは、地上で聞こえる全てのソニックブームを小さく静かにする「ロバスト低ブーム設計技術」を実証するプロジェクトです。「ロバスト低ブーム設計技術」を飛行試験により実証するとともに、その設計技術を用いて静かな超音速旅客機の概念機体を設計します。

D-SENDプロジェクト(2010年度~2015年度)

D-SEND(低ソニックブーム設計概念実証)プロジェクトは、将来の超音速旅客機実現の最重要課題の1つである「ソニックブーム」を低減させるための機体形状の設計概念及び手法を実証・評価するプロジェクトです。「低ソニックブーム設計概念」の実現性を飛行実証により示すとともに、現在国際的に検討が進んでいる次世代超音速機のソニックブームに関する国際基準検討に貢献可能な空中ソニックブーム計測手法を獲得することを目標として研究を行いました。

NEXST-1(小型超音速実験機)(1997年度~2005年度)

燃費を改善する超音速機の機体形状を適用した「NEXST-1(小型超音速実験機)」を、2002年と2005年にオーストラリアのウーメラ実験場で飛行実験を行い、コンコルドに比べ約13%空気抵抗を低減できることを実証しました。


2024年7月11日更新