スマートフォンサイトを表示

宇宙航空研究開発機構

JAXAの実験用航空機について (その3)

2018年7月20日

柳原 正明

 次世代航空イノベーションハブの柳原です。

 「JAXAの実験用航空機について」(その1:2017年8月7日)と(その2:2018年1月22日)でご紹介したように、JAXAは旧航空宇宙技術研究所(NAL)の時代から、実験用航空機としてプロペラ機しか持っていませんでしたが、2000年にJAXA初のヘリコプタを導入しました。

 日本の航空機(固定翼の飛行機、ヘリコプタ、グライダー、飛行船など、全て)の内、ヘリコプタが占める割合は30%超と、欧米各国(4~5%)と比べて極端に高くなっています。これは、国土が狭いため、長い滑走路を持った飛行場が建設しにくく、かつ移動距離も短い日本ではヘリコプタの需要が高いことを示していますが、山がちな国土や梅雨時の視程不良といった日本固有の理由による安全運航への脅威や、市街地における騒音問題等が利用拡大を妨げていました。そこで、日本の独自事情に対応する先進的なヘリコプタ運航技術の研究開発を行い、ヘリコプタの国内利用を拡大するとともに、これらの技術を国際標準化することにより、競争力を強化することを目的として実験用ヘリコプタの導入を決めました。

 導入した機体は、三菱重工業が初の純国産民間ヘリコプタとして開発したMH2000A型機をベースとし、いろいろな実験用計測機器を搭載しました。ちょうど同じ時期にイン・フライト・シミュレータ化されたドルニエ機とともに、それぞれMuPAL(Multi Purpose Aviation Laboratory、多目的実証実験機)-ε及びMuPAL-α、と名付けられました。“ε”と“α”は、それぞれギリシャ語で「ヘリコプタ」と「飛行機」を意味する単語の頭文字です。でも、私たちは、もっぱら“MH”と呼んでいました。

 MHは、ヘリコプタの騒音を低減する技術、ヘリポートで安全に運航する技術、無人機と有人機の連携技術、災害発生時などに視界不良時や夜間でも安全に飛行させる技術、JAXA宇宙部門の月着陸用レーダーの評価などの研究開発における飛行実証に活用しました。MHによって飛行実証を行った技術の中でも、世の中に役立つ大きな成果を生んでいるのがD-NET(災害救援航空機情報共有ネットワーク)です。詳しくは別資料などをご覧戴ければと思いますが、D-NETは地震や豪雨などの災害が発生した時に、対策本部において救援航空機の全体像を把握し、最適な運航管理を行って効率性・安全性を向上させるシステムです。2016年4月に発生した熊本大地震や2017年7月の九州北部豪雨において実際に活用され、災害救援における人命救助及び被害の軽減に貢献しました。 後者については、JAXAは消防庁長官から感謝状を戴いています

 MHは2013年に退役しました。運航したのは13年間でしたが、とても使いやすい機体で、JAXA初の実験用ヘリコプタとして研究開発を飛躍的に進展させるのに貢献してくれました。退役後は生まれ故郷である名古屋に戻り、昨年(2017年)オープンした「あいち航空ミュージアム」に展示されています。JAXAでは、MHのおかげで大きな成果を生むようになったヘリコプタ技術の研究開発を今後も継続するため、MH退役と同じ年に後継の実験用ヘリコプタとしてBK117 C-2型機を導入しました。この“BK”君も、世の中に役立つヘリコプタ技術の研究開発に貢献してくれるでしょう。

ページTOP