航空機エンジン用CMC

航空機エンジンの更なる軽量化と高推力化のため、燃焼ガスで駆動する低圧タービンの構成材料を現在のNi基耐熱合金からSiC繊維/SiC複合材料などのセラミックス基複合材料(CMC: Ceramic Matrix Composites)に置き換えることを目指した研究開発を行っています。
CMCは従来材料であるNi基耐熱合金(密度8g/cm3程度)に比べ、軽量で(密度2~3g/cm3)かつ耐熱性に優れるため、アメリカやフランスでもタービンに適用することが検討されています。CMC製タービンの実用化に当たっては、更なる高強度化、耐酸化性と耐熱性の向上、低コスト化、超高温での変形挙動のモデル化等、解決しなければならない課題が数多く残されています。JAXAでは、エンジンメーカーと協働しながら、CMCの超高温での耐久性や変形挙動を予測するための解析モデルを構築するとともに、必要となる超高温材料試験装置の開発や試験方法の標準化(JIS規格化及びISO規格化)を進めています。

低コスト製造技術

図1: SiC/SiCの超高温引張試験で使用する加熱炉付材料試験機


図2: Si合金の溶融含浸法により試作したCMC

次世代の航空機エンジン用タービン材料の開発を目的に、短期間で高性能なCMCを製造するためのプロセス技術の開発を行っています。図2はJAXAで検討しているSi合金の溶融含浸法により試作したCMC写真です。従来の製造法に比べて低温で製造できるため、安価なSiC繊維を強化繊維に用いることができ、かつ緻密なSiC系マトリックスを短時間で充填できるため、素材コストと製造コストの大幅な低減が実現できる可能性があります(特許申請中)。更には、高強度なCMCを得るために必要となる強度支配因子の解明のための基礎研究も行っています。

高耐酸化耐熱CMC

航空エンジンにおいて最も過酷環境に曝される高圧タービンおよび燃焼器部への適用が見込める1400℃級の長時間高温耐酸化性能を有する耐熱複合材料の成立を目指します。そのためまずはは耐酸化性能を有意に向上させるための材料組織とその形成方法を開拓し、実験室レベルでその有効性を実証します。特に長期に亘り高温過酷環境下で使用される航空機エンジン部品の特性として重要な高温大気中疲労寿命の向上に主眼を置きます。