構造安全性向上技術
現代の航空機の構造安全性は高い水準に達していますが、新たな技術の導入や評価解析技術の発展に対応して、さらなる安全性向上を目的として、「耐衝撃性評価技術」、「結合構造の強度予測」の研究を行っています。これらの技術を実現することにより、より効率的で安全性の高い新しい機体構造コンセプトの創出や機体整備プログラムの変革を目標にしています。
耐衝撃性評価技術
旅客機の胴体に新規材料や新規構造を採用する場合、ボーイング787型機がCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製の胴体を採用した場合と同様に、耐衝撃性に対し従来のアルミニウム合金製構造と同等以上の性能を有することが必要です。耐衝撃性能を考慮した構造設計ができれば、航空機の安全性能向上につながりますが、そのためには衝撃に対する構造解析技術や材料特性データが必要です。
JAXAには、金属製構造の衝撃解析技術、着水衝撃解析技術、材料の高速変形・破壊特性のデータベース、異物衝突試験や解析などの技術の蓄積があります。それらを有効に利用して、設計において耐衝撃性能を評価するための指標の提案や設計時に必要とされる解析手法の高度化を図ります。
胴体構造の落下試験(左)と詳細衝撃解析(右)の比較
結合構造の強度予測
航空機構造の製造コスト削減の観点から、金属構造ではリベットなどによる従来の機械結合に代わる接合技術の開発が進められており、一部のスキンーストリンガー構造などには摩擦攪拌接合技術の導入が検討されています。しかし、摩擦攪拌接合による組織的・力学的に不均質で残留応力も発生する接合部の強度評価技術は確立していないため、重要な技術課題となっています。また、接合部位の耐環境特性に関する評価も必要となっています。
そこでJAXAは、接合部表面の変形や応力などの分布を非接触で計測する技術と数値解析技術を組み合わせることにより、溶接接合部の不均質な力学特性や残留応力を同定する技術を研究開発しています。また、これらを考慮した疲労き裂伝播予測技術の研究開発も行っています。さらに、耐腐食性などについても研究を進めています。これらの知見、技術によって、将来の構造設計を見据えた、より適用範囲の広い強度評価手法の開発を目指します。
き裂進展速度の比較
初期腐食が疲労寿命に与える影響の比較
2019年8月23日更新