柔軟構造物の時変系モデリング

近年、人工衛星はミッションの多様化・高度化に伴い大型化・複雑化が進んでいます。そのため姿勢を制御する周波数帯域の拡大と、衛星構造の剛性低下により、制御周波数帯域と構造固有振動数の帯域が重なることがあり、姿勢制御系と構造振動の干渉が重要な問題となっています。実際に、運用中の衛星においてもこの問題が発生しているケースがあり、軌道上の衛星の高精度な柔構造パラメーターの同定問題は大型衛星開発プロジェクトにとって必須の技術になっています。
JAXAでは、技術試験衛星VI型「きく6号」(ETS-VI)、環境観測技術衛星「みどりII」(ADEOS-II)などによる数多くの軌道上システム同定実験を実施してきており、2006(平成18)年に打ち上げた技術試験衛星VIII型「きく8号」(ETS-VIII)では、軌道上柔構造特性同定の結果を利用した次世代姿勢制御実験を実施し、先端的な柔軟衛星姿勢制御技術の確立を図ってきました。

これらの技術を発展させ、柔軟構造システムの時変系・非線形系としてのシステム同定理論の構築を行い、大型展開構造物や可動展開構造物を持つ大型柔軟衛星の軌道上ダイナミクスを時変系として同定する手法を開発し、次世代の大型柔軟衛星開発に展開できる軌道上柔構造特性評価技術の確立を図ることを目的とします。