極低温燃料供給系技術

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2014年12月22日

液体ロケット燃料の宇宙空間での二相流挙動を、観測ロケットで確認

2014年8月4日23時00分、JAXAは内之浦宇宙空間観測所から観測ロケットS-310-43号機を打ち上げました。今回の観測ロケット実験は、観測ロケットを弾道飛行※1させることで生まれる低重力環境を利用し、宇宙空間での慣性飛行※2を模擬した環境での極低温液体ロケット燃料(今回実験で用いたのは液体窒素)の沸騰・流動などの挙動を調べることを目的としています。本実験において航空本部は、観測ロケットに搭載される極低温実験装置の開発を担当しました。本実験装置には、航空本部が早稲田大学、東北大学と連携して開発した二相流センサー(極低温ボイドメーター)※3が組み込まれています。

このセンサーは、一般に困難と言われる二相流状態※4での流量計測を実現するための新しいセンサーで、基幹ロケット高度化プロジェクトで打ち上げ能力向上に貢献したセンサーです。今回の観測ロケット実験では、宇宙空間での極低温ボイド率計測に世界で初めて成功し、その後の分析の結果、新型基幹ロケット予冷解析ツール精度検証に足る極低温二相流動データが得られたことを確認できました。今後は、新型基幹ロケットの搭載フライトセンサーや地上インフラ用のセンサーとしての適用も期待されています。

※1: 砲弾のように放物線を描く軌道で落下運動すること。
※2: 加速度がない状態での飛行。人工衛星は慣性飛行で地球の周りを飛んでいる。
※3: 配管内の気液体積の割合(ボイド率)を検知するセンサー。
※4: 異なる相の物質(気体や液体など)が混ざり合って流れる状態。

観測ロケットに搭載された極低温実験装置

極低温ボイドメーターの概要