静粛超音速機統合設計技術の研究開発

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現在の航空機は音よりも遅く、マッハ0.8程度で飛行しています。日本から欧米まではまだまだ遠く、飛行時間は12時間以上かかります。でも、もし音よりも速く、例えば倍の速度で飛行できれば、飛行時間は半分になり、日本から欧米への飛行時間は6時間ほどになります。移動時間が短縮されれば、ビジネスや観光の面から経済活動が活発になったり、災害時など緊急時の対応が迅速になったりして、より安心で豊かな社会になることが期待できます。更に飛行時間が6時間以内であれば、エコノミークラス症候群の発症が抑えられることから、誰でも今より気軽で楽な旅行ができるようになります。このような高速移動を可能にする航空機は、音よりも速く飛ぶことから超音速旅客機と呼ばれます。
このように超音速旅客機の実現が期待されているにもかかわらず、2003年のコンコルドの退役以降、その後を継ぐ超音速旅客機は現れていません。コンコルドは燃費が悪いことにより運航コストが非常に高いことが問題でした。また超音速飛行すると大きなソニックブームが発生することから、陸上を超音速飛行することができず、路線が限られてしまったことも、ビジネスとして成功しなかった一因でした。JAXAでは2002年から2005年にかけてNEXST-1(小型超音速実験機)飛行実験により、空気抵抗を下げて燃費を良くする技術を実証しました。また、2013年から2015年にかけてD-SEND#2の飛行実験により、ソニックブームが小さくなる機体設計技術のコンセプトを実証しました。このように、超音速旅客機が抱える課題を解決する鍵技術を取得し、JAXA独自の「静かな超音速旅客機」の機体概念を提示します。

小型超音速旅客機の概念イメージ

「静粛超音速機統合設計技術の研究開発」(6分29秒)

D-SENDプロジェクト

D-SEND(低ソニックブーム設計概念実証)プロジェクトは、将来の超音速旅客機実現の最重要課題の1つである「ソニックブーム」を低減させるための機体形状の設計概念及び手法を実証・評価するプロジェクトです。「低ソニックブーム設計概念」の実現性を飛行実証により示すとともに、現在国際的に検討が進んでいる次世代超音速機のソニックブームに関する国際基準検討に貢献可能な空中ソニックブーム計測手法を獲得することを目標として研究を行いました。

NEXST-1(小型超音速実験機)

燃費を改善する超音速機の機体形状を適用した「NEXST-1(小型超音速実験機)」を、2002年、2005年にオーストラリアのウーメラ実験場で飛行実験を行い、コンコルドに比べ約13%空気抵抗を低減できることを実証しました。

次世代静粛超音速機機体概念

NEXST-1やD-SENDプロジェクトにより実証された航空機設計技術を用いて設計した飛行マッハ数1.6、乗客数36~50人、離陸重量70トンクラスの小型超音速旅客機の機体概念を提示します。


2019年12月17日更新