飛行技術の研究

航空宇宙産業の基幹産業化と国際競争力の強化のためには、飛行シミュレータによる地上試験や実験用航空機による飛行実証を経て、実用性のある技術に効率的に仕上げる手順の確立が必要です。
JAXAは飛行実証を行うための基盤となる飛行試験設備(実験用航空機、飛行シミュレータ及び飛行実験基地)や、飛行試験技術を保有しています。これらの飛行実証に関係する設備や技術の高度化を図るとともに、それらを用いてJAXA内外からの飛行実証ニーズに応えていきます。また、これらの設備や技術を活用しつつ、独自の飛行システム基盤技術の研究開発を行い、短期的・長期的な視点で社会に貢献していきます。

飛行実証技術の研究

MuPAL-α飛行実証技術

無人航空機が解決すべき技術課題を現行の航空交通管制の下で飛行実証することを可能とし、実験用航空機「MuPAL-α」の活用範囲を拡大するため、実験用FBW(フライ・バイ・ワイヤー)操縦システムに地上からの遠隔操縦によって運航する機能を追加し、無人航空機システムの模擬を可能とします。

ジェットFTB飛行実証技術

MuPAL-αで蓄積された技術を発展させ、実験用航空機「飛翔」の飛行領域にも対応した飛行特性の同定技術を新たに確立します。更にその同定技術を活用し、「飛翔」を利用したいというニーズに応えるための飛行シミュレーション環境を構築します。

ヘリコプター飛行技術

実験用ヘリコプターを活用し、災害時を想定した有人機・無人機連携技術や線上障害物検知技術等我が国の独自事情に対応する先進技術を開発し、更にこれらの技術を国際標準化して、国際競争力の強化を目指します。

飛行システム基盤技術の研究

搭載モデルベース制御と統計的設計技術

機上の計算機に搭載した運動モデル情報を活用して、高速/高空から離着陸までの広範な飛行領域をカバーし、緊急時や気象変化に応じた経路変更など、柔軟な運用が可能となる飛行制御システムの実現を目指します。また、モンテカルロシミュレーションを用いて性能を評価する技術により、飛行制御系設計評価を効率化するとともに、信頼性を向上し、システム設計への効果的なフィードバックツールを実現します。

ヒューマンファクタ技術

これまでのJAXAの航空人間工学研究の経緯と成果、並びに運航・航空機製造現場での課題を鑑み、ヒューマンエラー、疲労、状況認識、ノンテクニカルスキル等のさまざまな計測指標について横断的に矛盾無く計測するための指標体系を構築することを目的とします。

V/STOL機の飛行性・評価技術

将来の航空輸送の運用性向上や利便性向上をもたらしうるV/STOL機開発のため、飛行性・安全性設計及び評価の基盤技術として重要な、機体特性の正確なシミュレーション環境及びそれに基づく安全基準・評価手法の開発を行い、設計や解析プロセスの効率化を可能にします。