エミッションフリー航空機技術の研究開発

次世代航空イノベーションハブの活動

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航空機の電動化は燃費や整備費を大幅に低減できる革新技術の候補であり、将来の航空機技術の競争力を左右する重要な技術です。将来この分野で日本が国際的に優位に立つため、JAXAでは先行して電動化航空機における国内有人飛行の前例を作り、国内の電動化航空機開発を推進する「FEATHER(Flight demonstration of Electric Aircraft Technology for Harmonized Ecological Revolution)」事業を2014年度まで行ってきました。FEATHERで得られた技術を発展させて、電動モーターの特性を活かした航空機用パワーマネージメント技術の研究や、燃料電池やガスタービンエンジンなどと組み合わせることによりさらに出力を向上可能なハイブリッド推進システムの検討を行っていきます。

航空機用電動推進システム技術の飛行実証(FEATHER)

開発した航空機用電動推進システム

バッテリーとモーターによる電動推進システムは、バッテリーの重量あたりのエネルギー容量がまだ十分でないため、航続距離を伸ばそうとすると重くなってしまう課題がありますが、従来のエンジンに比べ燃料費が低く、整備も容易に行えるため、運航コストを抑えることができます。また飛行時にCO2を出さず、騒音や振動も少ないので、環境適合性が高いのも特長です。
JAXAは、小型の航空機に搭載でき、重量当たりの出力が大きくかつ高効率で、さらに降下時にはエネルギーを回生しバッテリーを充電できる航空機用モーターシステムを研究開発してきました。既存航空機のレシプロエンジンをこのモーターシステムに置き換え、2014年から2015年にかけて大利根飛行場や航空自衛隊岐阜基地などで、実際に人が搭乗して操縦することによって飛行実証試験を行いました。本格的な電動航空機の有人飛行は国内初です。

電動化モーターグライダーシステム概要
原型機 ダイヤモンド・エアクラフト式HK36TTC-ECO
全幅 16.33m
最大離陸重量 850kgf
電力源 Li-Ion電池(75Ah、128V、32直列)
電動モーター形式 永久磁石型同期モーター
電動モーター最大出力 60kW
インバーター IGBT
冷却 水冷式
乗員 1名

ハイブリッド推進システム

FEATHERで獲得した技術を発展させて、電動推進系・液体水素等低炭素燃料やバイオ燃料など新燃料の適用によって環境適合性を飛躍的に向上させる技術を研究しています。一例として、液体水素燃料を用い、燃料電池とガスタービンの複合サイクルを利用した高効率発電機を電力源として、さらに効率を向上させたハイブリッド推進システムのシステム検討を行っています。これら有望な推進システム概念の検討を比較し、技術成立性の見通しを得た上で技術実証を行っていきます。

ハイブリッド電動推進システム航空機(150席クラス)の構想図


2019年12月17日更新