WEATHER-Eye(気象影響防御)技術

トピックス一覧へ

2021年2月9日

JAXAのアルゴリズムとエムティーアイの航空気象情報を活用し航空気象システム『ARVI』での被雷予測エリアの可視化に成功

JAXA航空技術部門と株式会社エムティーアイ(以下、エムティーアイ)は、2019年11月より航空機の被雷回避に向けた共同研究を実施しています。
今回、JAXAが研究する「被雷危険性予測技術」から算出されるアルゴリズムの誘発雷の検出率85.1%※1のデータに気象状況を加え、エムティーアイが企画・開発した航空気象システム『ARVI(アーヴィー)』上で被雷予測エリアの可視化に成功しました。
本共同研究の結果は、2021年1月10日から1月15日(現地時間)に行われた「第101回アメリカ気象学会年次大会(The American Meteorological Society 101st Annual Meeting)※2」にて発表されました。

(株)エムティーアイ提供※『ARVI』被雷予測エリアの比較画像


◆JAXA×『ARVI』 航空機の誘発雷検出率85.1%※1を達成し、被雷予測エリアの可視化にも成功

航空機の運航において、機体が被雷することがあります。被雷は自然に引き起こされるのではなく、帯電した雲に機体が近づくことで誘発されることがほとんどです。航空機が被雷を受けても、安全な運航が堅持できるように機体には様々な工夫がなされていますが、被雷による着陸後の点検作業などによりスケジュールに変更が生じ、欠航や遅延が発生する場合があります。
このような背景を受け、航空機運航における気象の影響の軽減を目指す研究を実施するJAXAと、安全な運航(運航判断)をサポートする航空気象システム『ARVI』では、2019年11月より「航空機被雷回避」に向けた共同研究を実施しています。
冬の日本海沿岸が特に多いとされている誘発雷ですが、一年を通して被雷の可能性があることから、本研究では、JAXAによる過去の気象データ分析により導き出した「被雷危険性予測技術」から、季節を問わず日本全域の空で誘発雷を起こす雲を予測できるアルゴリズムを構築しました。また、エムティーアイが『ARVI』上で被雷予測エリアを可視化することに成功し、アルゴリズムに気象要素を加えることで、被雷予測エリアの高度幅表示も可能にしました。これにより、被雷が発生しそうな気象状態を視覚的に察知することができ、そのエリアを回避する運航ルートの選択を支援します。


(株)エムティーアイ提供※『ARVI』被雷エリアの高度幅表示画像
(吹き出し内の数字は高度1,968~6,560フィートに黄色の領域があることを示している)

また、今回の共同研究に伴い、航空事業社数社にて、『ARVI』上に表示された被雷予測エリアとの検証を実施ました。

【検証後の航空事業社によるコメントの一部抜粋】
●早めに高度を降ろすなど、被雷回避の選択肢が増えるのでよい。(春秋航空日本株式会社)
●精度の高い誘発雷情報を活用できれば、被雷回避の精度が向上し、機体修理による欠航などの機会が減り、より安定したオペレーションが供給できる。(全日本空輸株式会社)
今後は、被雷の予測情報をリアルタイムに3D画像で配信し、回避に向けた判断や行動を実施できるかについての検証を予定しており、運航の効率向上と航空機の安全性を高めることを目指します。
<共同研究について>
実施期間 : 2019年11月21日から2022年3月31日
研究内容 : 被雷予測情報の配信と、実用化に向けた評価

<航空気象システム『ARVI』について>
雨雲や雪、風、火山、台風など航空機の運航に影響を与える気象・災害情報とフライトプランを、ひとつの画面でまとめて確認ができるシステムです。
リアルタイムな気象現象と飛行ルートをひと目で確認でき、運航管理者による気象条件の良いルート選択や、安全なフライトプランの作成を支援します。また、データ量の大きい複数の気象情報を重ねて表示してもスムーズに操作ができるため、パイロットや客室乗務員は、飛行ルート上に危険な気象現象が発生していないかを素早く確認でき、安全な運航のサポートだけでなく、業務の効率化も図ります。
『ARVI』の詳細についてはこちら

※1:冬季の小松・庄内エリア、夏季の羽田・成田エリアにおいて、過去の航空機被雷事例の一部を活用した検証結果。
※2:第101回アメリカ気象学会年次大会(The American Meteorological Society 101st Annual Meeting)