空旅のユニバーサルデザインに関する研究開発

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2024年1月30日

“ユニバーサルデザインの空旅”を実現する革新的な機内バリアフリートイレの提案

JAXAと株式会社ジャムコは、長い間身体障害者にとって課題となっていた、空の旅におけるラバトリー(機内トイレ)の問題を解決する、ソーシャルイノベーションのコンセプトを提案します。

提案するコンセプト「メタモルフィック・ラバトリー」は、2つの隣り合うラバトリーユニットと、ラバトリーに隣接するクロスアイル(左右のドアを繋ぐ機内通路)を結合し、これまでにない大きな空間を創出するものです。これにより、全介助の必要な身体障害者であっても、地上のバリアフリートイレと同じようにラバトリーを使用することが可能になります。

それだけでなく、航空機のラバトリーは公共施設として「誰にも寄り添うトイレ」であることが求められることから、様々な乗客のニーズを取り込み、誰にとっても使いやすいバリアフリー設備に仕上げました。


スタンダードモードを上から見たCGモデル

スタンダードモードでは、2つのラバトリーユニットと、クロスアイルと座席の間にあるパーティションで構成されます。この配置は、実際に就航しているワイドボディ機(通路が2つある機材)のクロスアイルスペースにあるものと同じものです。本コンセプトでは、ラバトリーユニットの片方をオープンな多目的スペースとしてデザインしています。両方がクローズドなトイレスペースの場合でも、空間拡張は可能です。(画像提供: 株式会社ジャムコ)


完全拡張モードを上から見たCGモデル

完全拡張モードでは、身体障害者が機内用車椅子で便器に近づくことができ、2人の介助者が便器の正面と側面に位置して支援することができます。背もたれ、跳ね上げ式の手すりも用意されています。壁側のL字型手すりは、自分で移乗ができる身体障害者にとって便利です。パーティションにより、臭いや音の流出を防ぎ、利用者のプライバシーを守ります。(画像提供: 株式会社ジャムコ)


簡易的なベッドのCGモデル

パーティションに収納されている簡易的なベッドは、衣服の着脱に使用できるほか、大人用のおむつ替え台としても利用できます。(画像提供: 株式会社ジャムコ)


便器の上に展開できる小棚のCGモデル

便器の上から展開できる小棚と鏡はオストメイトがストーマ装具を処理するのに便利です。(画像提供: 株式会社ジャムコ)


個別拡張モードのCGモデル

この個別拡張モードによって、大人と子どもが入るのに十分な広さとなります。授乳スペースとして、また発達障害児のためのカームダウン・クールダウンスペースとして使用できます。従来通り、乳幼児用のおむつ交換台もあります。(画像提供: 株式会社ジャムコ)


取り組みの背景

旅客機のラバトリーは、現在ワイドボディ機に通常1つ設置されているアクセシブルなラバトリーでさえ、そのサイズは非常に小さく、介助者が内部で身体障害者を支援する十分な広さがありません。その結果、全介助を必要とする身体障害者は、フライト中にラバトリーを使用することが難しいという問題に直面しています。この未解決の問題は、人権の観点からも大変重要であり、特に長距離のフライトにおいてその解決は急がれます。

しかし、単純にラバトリースペースを大きくすると、座席数の減少が避けられず、航空会社の収益に影響します。JAXAと株式会社ジャムコはこの問題を議論し、座席数を減らすことなく、ラバトリーを一時的に拡張して介助者の支援のためのスペースを確保できるコンセプトを開発しました。

これに加えて、これまでにJAXAで実施した調査で明らかになっている様々な乗客のニーズについても、ラバトリーの機能として実装しました。これによって、車椅子利用者だけでなく、様々な人々にとって使いやすいラバトリーに仕上がっています。

2024年1月30日更新