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宇宙航空研究開発機構

大気突入機の熱空力評価システムの高度化

惑星大気突入機を開発する上で、突入時のさまざまな段階において空力性能や加熱環境を正確に予測して設計を行っていくことが重要ですが、そのための試験を実際の飛行条件で行うのは膨大なコストがかかります。しかし一方で、地上の装置で飛行環境を再現することも非常に困難です。そこで、数値解析技術によって地上での試験と実際の飛行環境を橋渡し、実際の飛行環境で試験を行うのと同等の効果が得られる技術として、大気突入システムの熱空力設計を行うための設計ツールや評価試験技術を開発し、それらのツールを体系化して、惑星大気突入機の熱空力環境評価システムを完成させています。これによりJAXA内で検討している小型回収システムや火星探査機を実現するための試験環境の提供は既に実現できていますが、さらなる精度向上、信頼性の向上、利便性の向上など改善をしていく必要があります。さらに自由飛翔体の試験や高度な熱空力設計(熱防御システムの軽量化、最適熱空力設計、コンティンジェンシー時のカタストロフィック事象の予測)を可能にしていきます。

具体的には、

  1. JAXA が大気突入ミッションを今後実現するために必要となる熱空力評価システム(ソフトウェアおよびハードウェア)を高度化(機能拡張と適用範囲拡大)します。
  2. 1を用いてミッション(小型回収カプセル、火星探査機など)の開発を支援します。
  3. 1を用いた世界トップレベル・世界初の学術的成果の創出をねらった先端研究を実施します。

ことにより課題を解決していきます。

熱化学非平衡流解析コード「JONATHAN」

航空技術部門では大気圏突入時の極超音速飛行における空力性能や加熱環境を予測することを目的として、熱化学非平衡流解析コード JONATHAN (JAXA Optimized Nonequilibrium Aero-Thermodynamic ANalysis code) を継続的に開発・整備しています。大気圏突入時に秒速5~7kmを超えるような速度で飛行する場合、カプセル周りの流れは非常に高温な状態になり、窒素や酸素分子の回転や振動エネルギーの励起さらには分子の熱解離や電離などの熱化学反応が生じます。このような流れ場のことを熱化学非平衡流といいますが、JONATHAN では専門知識の乏しいユーザーでも熱化学非平衡流の解析を行うことができるようにコードの汎用化が進められています。また、JAXAにおける最新の研究成果をコードに取り入れながら、より一層の高度なツールを目指しています。

JONATHAN による火星大気圏突入カプセルの解析例(マッハ26)

JONATHAN によるはやぶさ型カプセルの超音速飛行時(マッハ1.1)の解析例


輻射計算パッケージ「SPRADIAN」

SPRADIAN (Structured Package for RADiation ANalysis) は、宇宙科学研究所の小惑星サンプルリターンミッション(はやぶさ)計画の一貫として、再突入カプセルの輻射加熱環境を評価することを目的として開発された輻射計算のためのツール群で、それまでに開発された分光データベース、輻射輸送計算コード等をまとめてパッケージとしたものです。

SPRADIAN では、ある温度と密度分布をもつ媒体中の任意の点における放射係数及び吸収係数を計算し、媒体中の輻射輸送計算を行うことができます。例えば、大気圏突入カプセルまわりの流れを JONATHAN により解析し、そのデータを用いてカプセル表面における輻射加熱量を評価することができます。また、衝撃波管や衝撃風洞を用いた実験に応用して、流れ場の物理量(温度や化学種の組成)を決定することや、逆に流れの計算と併用して観測される輻射スペクトルを予測することもできます。

SPRADIANで計算した金星大気突入カプセルの淀み点に放射するスペクトル



2018年12月21日更新
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